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ファンケル 経営改革が始動、スピード経営で〝らしさ〟復活へ

011.jpg ファンケルの創業者、池森賢二氏が4月、同社の会長に就任し現場復帰した。池森氏による新体制の下で経営改革が始動。事業規模の拡大と共に失われてきた"ファンケルらしさ"の復活を目指していく。前期に実施したリブランディングは、数値目標が計画未達となり、創業来初の赤字決算となったファンケル。「無添加」という鋭い切り口で化粧品市場を切り開いたかつての輝きを取り戻し、再成長の軌道に乗ることができるのか。

矢継ぎ早に経営改革を推進

 「創業者の私にしかできない改革をスピード感を持って行い、根本からつくり直していきたい」。池森会長の言葉通り、新体制に移行してからファンケルは矢継ぎ早に改革を行っている。

 1月に池森名誉会長が会長に、宮島会長が社長に復帰する人事を発表すると、「カンパニー制への組織改編」「店舗スタッフのベースアップ」「持ち株会社体制への移行」を次々と発表。池森氏は4月、正式に会長に就任し、5月14日開催の取締役会で代表権を持つ会長に就任することを決議した。

 持株会社体制への移行は、株主総会の承認を得た上で来年4月1日に実施。ファンケルは会社分割により傘下にファンケル化粧品(本社・横浜市中区、山岡美奈子社長)、ファンケルヘルスサイエンス(同、村上晴紀社長)を設立。アテニアなど既存のグループ会社をおさめる体制に移行する。

特損計上で創業来の赤字決算

013.jpg池森会長の現場復帰の一因は、リブランディングが計画未達で前期を終えたことだ。

 2013年3月期(右下表)は、ファンケル保有の中国販売代理店株式を減損処理するなど計56億8800万円の特別損失を計上し、創業来初となる赤字決算。リブランディングに伴うマーケティング費用の増加が響き、営業利益は同5・7%減だった。

 化粧品事業の売上高は昨年1月のリブランディング発表時に前年比10%増を掲げたが、いいもの王国の連結の影響を除く化粧品事業は同2・3%増、「ファンケル化粧品」は同2・5%増の371億200万円の売り上げだった。化粧品事業全体の営業利益は同16・2%減の38億8800万円だった。健康食品事業は、営業利益が同24・3%増の19億6200万円円となったが、減収に加え、リブランディングの影響で健食事業のマーケティング費用を抑えたことによる増益だった。

 池森氏は「新体制で経営を進めるに当たり、懸案事項や不採算事業の整理に一定のめどをつけ、大胆な経営改革を行っていく」と説明。「3年で再成長に道筋をつける」と抱負を語った。

 12年を初年度に、15年3月期(連結)に売上高1010億円、営業利益80億円、営業利益率8%を達成する中計を定めたが、これも全面的に見直す。

ブランド再構築は「自己満足」

012.jpg 池森会長の危機意識は「ファンケルらしさ」が失われつつあることにある。"日々の売り上げよりお客様に喜んでいただくことがすべての基準"とする経営理念の希薄化が進み、「お客様視点」、青汁や発芽米事業、アテニアなど新たなビジネスモデルを生み出してきた「チャレンジ精神」、「社会奉仕」というファンケルらしさは失われてきた。

 「自己満足の芸術品」。池森会長は、今回のリブランディングもこう評価する。品質に対する高い評価が得られた一方で、"字が小さくて読みづらい""(どの製品も白いパッケージで)商品が選びにくい"など顧客満足を下げる結果となり、クレームも増加していたためだ。

 当面はスキンケアのライン訴求を行うCMは行わず、リニューアルを実施した洗顔パウダーなどを主力に展開。スキンケアは顧客コミュニケーション、識別性などをテーマに再検討していく。


 再成長に向けた基盤となるのは社員教育を通じた「お客様視点」の徹底だ。

 「私の目から見ると昔に比べて社員の質が少し落ちた。技術力や勉強が足りておらず、教育レベルはあまり高くない」(池森会長)。専門家集団に育成するため社内に「ファンケル大学」を新設。これまで各部署が担っていた従業員の教育機能を集約し、理念教育や美容や健康に関する専門教育、さらには次世代経営者の育成も目指していく。今年3月、店舗の契約社員約1100人を対象に月額最大2万円のベースアップを実施したのも質の高いスタッフの確保と育成を図るためだ。

今秋、パーソナルコスメ展開へ

 一方で研究開発体制も強化する。健康機能のある食品の開発を担う「食品研究所」、アンチエイジング化粧品分野の研究を行う「アドバンスドリサーチセンター」など、研究部門を拡充。「現在、博士号を持つスタッフだけで18人ほどいるが、これを倍くらいの組織にする」(池森会長)としており、ブランドの強化を図っていく。

 すでにヒトの角質のデータ解析から化粧品をつくる技術を開発。今秋をめどに「パーソナルコスメ」の販売を行っていく方針。

 健康食品事業も、「体内効率」をコンセプトに製品を開発。ミネラルの吸収効率を高めた「ツイントース」やコラーゲンの同「HTCコラーゲン」など独自素材を強みに、成分の配合量のみを強みとする健食と差別化を図る。

 さらに、より医薬品領域に近いドクターズサプリや、青汁や発芽玄米など健康機能のある食品領域に近い製品の開発も食品会社との共同研究で進めていく。

流通戦略拡大で売上減に歯止め

 基幹事業である直販部門の立て直しを行う間、売り上げへの影響を補う方策として流通戦略も拡大する。

 現在、健食のコンビニ卸を展開するが、これを拡大する一方、化粧品もPBやOEM供給を展開。売り上げに占める卸販売の売上比率を3年間で現在の約10%から25%程度まで引き上げていく。

 海外事業も、収益構造の改革で利益体質への転換を図る。

 米国で展開する無添加化粧品ブランド「bouscia(ボウシャ)」は化粧品セレクトショップのセフォラを通じた展開。販売は好調に推移しており、現在、20億円(セフォラの小売ベース)の売り上げを14年に40億円まで高める。「ボウシャ」は、当初約4割だった現地生産比率をすでに100%まで引き上げており、製造コストや輸送費の削減など収益性の改善が進んでいる。

 2月以降、新スキンケアを展開する台湾やシンガポールもリブランディング以降、4月末まで前年比10%増の伸び率。ただ、店舗展開が中心で固定費など収益構造に問題があることから利益体質への転換を図る。


会見における池森会長の発言要旨

 5月13日に行われたファンケルの新経営方針説明会における池森賢二会長(写真)の発言要旨を一部抜粋して紹介する。

■現場復帰の経緯

 アイフォーレの再建や健康院クリニックを自分の最後の仕事だと考えていたので当初は復帰する考えはなかった。

 ファンケルでは経営陣が総力を挙げてリブランディングを行ったが、例えば「無添加」という言葉がかっこ悪いから「純化」という表現にするなど、発表後に計画を聞いた時には「それで大丈夫なのか」と注意したことがあった。経営陣の意欲を聞いて任せたが、その際にも「プロセスがどれほど立派でも経営者は結果責任を取らなければいけないよ」と伝え、結果として成果を上げることができなかった。

 前経営陣が駄目だということではなく、一生懸命やっていたが結果がついてこなかった。前社長が責任を取って引きたいが、私に戻ってほしいという要請があり、戻ってきた。スピード感のある経営改革を行い、できれば3年で立て直して私は引きたいと考えている。

■リブランディング評価

 戻ってきて一番心配していることは、「経営理念の希薄化」が相当進んでしまったということ。「不の解消」「お客様視点で物事を見る」といった点が欠けている部分があり、リブランディングもお客様に十分に受け入れられなかった。

 私は今回のリブランディングを「自己満足の芸術品」と評価している。若い人たちに使ってほしいという思いで開発し、中身は非常に良いものとなった。しかし、例えば商品が選びづらいなどクレームも増えた。良い部分は伸ばし、悪い部分を改革していきたい。

■基本方針と戦略

 創業の原点に立ち返り「ファンケルらしさ」を実現する。これは「お客様視点に立った行動」「新しいことに果敢にチャレンジすること」「社会奉仕」。ファンケルスマイルという知的障害者の方を採用した会社は、今では社員も増え、日本のみならず、海外からも見学者が来るまで成長している。その意味で社会貢献もファンケルの重要な事業の一つと考えている。

 また、女性スタッフも幅広く活用していく。すでに女性の専務取締役を1人選任し、4人の女性を執行役員に昇格させた。極めて優秀な女性がいる中で、これまで積極的に活用してこなかったという反省がある。安倍首相が女性の活用について言及されたが、世界的にもやはり女性の活用がこれから世の中を素晴らしいものにしていくと私も考えている。それがファンケルの成長に欠くことのできない条件だと思っている。

■「ファンケルらしさ」が失われた背景について

 ファンケルはその日の売り上げではなくお客様に喜んでいただくことを基準としてきたが、今回リブランディングが思うよう進まず、各店舗に売り上げを上げるためにノルマに近いものを課すようなことをやってきた。これが店舗スタッフの離職につながり、人員が足りずに短期間で教育したスタッフを配置せざるを得なくなり、お客様満足度が下がってきてしまった。

■社員教育による専門家集団育成

 現在、健食は「化粧品店舗の棚に並んでいる」という程度の売れ方をしていた。考えているのは、化粧品と健食の店舗をしっかり分け、健食は薬剤師ないし管理栄養士、栄養学を専門に勉強したスタッフを置き、ドクターが関与した形の販売も検討していきたい。化粧品も皮膚生理学を本格的に学んだスタッフや、メークアップアーティストなどの資格を持ったスタッフを置くことで専門家集団として差別化を図りたい。



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