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ヤフー 仮想モールをテコ入れへ、7月に出店プランを変更

 1-1.jpgヤフーは今夏から運営する仮想モール「ヤフーショッピング」の規模拡大に本腰を入れる。手始めに出店者の「やる気」を引き出すべく、月商が増えれば増えるほど手数料率が下がっていく形式に出店プランを変更。1店舗あたりの売上高を引き上げ、流通総額を今年度末には前年度比25%増となる2500億円程度まで引き上げたい考え。ただ、新プランは多くの出店者にとって現状よりヤフーに支払う出店料金が増えることなどから不満の声も出ている。流通総額を増やし、負担増分を売り上げ拡大で補てんできればよいが、失敗に終われば出店者の反発は必至で多くの退店を招きかねない。狙いと勝算は。

 「いつまでも『楽天の後追い』というわけにはいかない。今年度は"勝負の年"になる」。今年7月にも仮想モール「ヤフーショッピング」の出店プランの改訂に踏み切る理由についてヤフーの担当者はこう説明する。

 ヤフーショッピングの現行の出店プランは出店者が自身の売上規模などによって選べるよう月額固定費が安い分、売り上げに応じて徴収される売上ロイヤルティの料率が高い「レギュラープラン」など3つのタイプを用意しているが、7月1日に予定するプラン改訂後はプランを1つとして、月間の売上高が増えるほど手数料率がどんどん下がる形とする。

 出店者にとってこの新たな出店プランは「売れば売るほど」ヤフーに支払う手数料が減っていくものであり、歓迎すべき改訂のように思われるが、ヤフーによると「正直なところ、現状までに当社に寄せられている声としては(「苦情」と「歓迎」の声が)半々」としており、反発の声も多く出ているようだ。これは新プランが導入されると多くの出店者にとって出店料が「実質、値上げ」になるためだ。

 新プランでは「月商500万円」が現行プランよりも手数料が増えるか減るかのボーダーとなるよう。これ以下の月商の出店者は数百円から数千円、月商数万から十数万円の出店者では最大で3万円の値上げとなるようだ。現在、ヤフーショッピングでアクティブと思われる店舗およそ1・5万店のうち、月間500万円以上の売り上げをあげている出店者はおよそ1割程度と見られるため、金額の大小こそあれ大半の出店者にとっては負担増となるわけだ。

 負担が増える出店者にとっては、苦情を言いたくなるのは当然のこと。しかも9割近くが負担増となるため、"大量退店"という最悪のケースも考えられるわけだが、それでもヤフーがプラン改訂に踏み切ったのはなぜなのか。そこにはヤフーの"自信"と"覚悟"があるようだ。


負担増を補う売り上げ拡大を

 「多くのストアで(現行よりも出店料が)値上げになるのは事実。そうしたストアには申し訳ないと思っているが、その分、各ストアの売り上げを上げるための手厚い施策を用意しており、売り上げを上げて頂ければと考えている」。プラン改訂は上位店舗に偏った優遇措置ではないか、との指摘もあるが、ヤフーによると新プラン導入の目的は、上位店だけでなく広く全出店者の"やる気"を引き出し、各店舗の売り上げを上げていくことだとする。新プラン導入で手数料率の値下げなど直接的な恩恵を享受できる店舗は確かに現時点では少数派だが、「やる気」を出してもらい、かつヤフーが今後、強化していくという販促支援策によって、現状よりも売り上げを上げることができれば、負担増を補って余りある売り上げを上げることができると説明する。


手数料率の引き下げ額を目標に

 では、どう"やる気"を引き出すのか。1つは手数料率の決定が非常にシンプルである新プランの仕組みによる"やる気"の喚起だ。現行プランの手数料率は非常に複雑だ。例えば月商500万円強の出店者がヤフーに徴収される手数料の料率は(※「レギュラープラン」の場合)は「初めの50万円」は4・5%、「50万円から100万円」までは4・0%、「100万円から500万円」までが3・5%、「500万円以上」では3・0%と「売上500万円」の中でも手数料率は変わっていく。

 一方、新プランは売上総額で手数料率が決定する方式で、例えば月商500万円の出店者が徴収される手数料率は「500万円」すべて3・3%と非常に分かりやすい。そしてやる気を引き出す大きなポイントとなるのはこの手数料率が引き下がる売上金額を数十万、数百万単位と細かく設定していること。「月商500万円」の手数料率は前述の通り、3・3%だが、「500万1円」になると料率は2・9%と引き下がる。1円でも超えれば全額の手数料率が0・4%引き下がるわけだ(左表参照)。

 このため、出店者は「手数料率が引き下がるボーダーラインを1円でも超えること」など具体的な目標が立てやすくなるようだ。

 新プランでは手数料率の変更だけでなく、これまでは出店者から徴収していた「Yahoo!ウォレット」などの「ストア向け決済サービス」を利用するための月額手数料や、販促には欠かせない「Tポイント」の発行手数料を無料としている。これも出店者の月商を増やす上で1つのポイントとなるようだ。


モール内広告の出稿料値下げも

 新プラン導入にあわせて、出店者の集客アップを支援すべく、「これまでの料金では手が届かなかったストアにも利用して頂きたい」として7月以降にはモール内広告の一部について料金の値下げを行う予定。加えて、「ヤフーショッピング全体としての集客アップのため、SEOやSEMなどの検索エンジン対策の強化やシステム改善を"爆速"で進める」(同社)考えとしており、このほか、「様々なネタを用意しており、手厚いサポートを行っていく」(同)という。この結果、ヤフーショッピングの年間流通総額を前年度の約2000億円から今年度末には25%増の2500億円程度まで拡大させる計画としている。


万年2番手から浮上なるか?

 近年のヤフーショッピングの流通総額の伸び悩みからすると25%増という目標値の達成は疑問視せざるを得ないが、今年は昨年、資本業務提携を行ったアスクルと展開し始めた通販サイト「ロハコ」と連携した出店者の商品を速配する物流代行サービスの開始や自社ポイントを「Tポイント」に完全に切り替えてリアル展開を含めてポイントによる拡販を本格化させるなど、ヤフーにとってはネット販売関連事業では特に「勝負の年」となりそうで、このタイミングで出店者からの反発覚悟で仮想モールに新プランを導入したのはヤフーの仮想モール拡大に向けての"覚悟"の現れと言えそう。

 これまで仮想モールといえば、「楽天市場」が断トツの存在で「ヤフーショッピング」は万年2番手が定番のポジションとなっていた。出店する通販事業者にとっても楽天は「稼ぐモール」、ヤフーは「手軽に少額で運営できるモール」という意識が定着化し、それゆえヤフーは楽天に仮想モールでは差を縮められずにいたわけだ。

 ある意味で「劇薬」と言える新プラン導入で、出店者の意識を変え思惑通り「やる気」を引き出せるか。7月以降のヤフーの動きが注視されそうだ。



【ヤフーショッピングの担当者に聞く】
「今年が勝負」 出店者のモチベーション喚起へ


 7月にも仮想モール「ヤフーショッピング」の出店プランの改訂に踏み切るヤフー。仮想モール事業を管轄する同社のショッピング事業本部の畑中基本部長および同本部の中谷祐太氏にその目的や狙いなどについて聞いた。



──ヤフーショッピングの出店プランを改訂する理由は。
 
中谷 「目的はストア(=出店者)にもっと『ヤフーショッピング』を使って頂くためだ。今回のプラン改訂では現行の3つのプランを廃して、1つのプランとし、かつ売上ロイヤルティ(ヤフーが出店者の売上高に応じて徴収する手数料率)を分かりやすくシンプルなものにした。売上金額に比例してロイヤルティの料率が下がる形式としストアのモチベーションを高めたいと考えた」

──なぜ新プランで出店者のモチベーションが高まるのか。
 
畑中 「出店プランが3つある時点で、ストアにとってはどれかを選ばねばならないわけだが、まずそれ自体が手間になる。そのため、1つしてシンプルにした。また、現行プランでも我々の意図としては、出店後に売り上げを増やしてもらい、どんどんロイヤルティが安くなるプランにステップアップしてもらうことを想定していたが、本当はもっと上のプランにすれば結果的に(手数料率が)安くなるはずなのに、実際には出店時に契約したプランのままのストアが多かった。これはやはり、違いが分かりにくかった部分もあったかと思う。また、現行プランは売上額の段階に応じて手数料率が変わるという分かりにくいさがあった。新プランでは月間の売上総額で手数料率を決定する方式としており、非常に分かりやすい。このため、例えば、月商150万円のストアにかかる手数料率は5・5%だが、もし150万円よりも1円でも多く売れば手数料率は5・2%になる。具体的な目標設定ができモチベーションは高まると思う。我々としても次の段階にいくには『今月はもう少し売れば料率が安くなりますよ』という点で、我々とストアが同じ目線でコミュニケーションをとりながら、一緒に目標に向けて進んでいくことができる」
 
中谷 「売上ロイヤルティの変更に加えて、ストア向けの決済サービスの月額固定費を無料にした。これで特にワンクリックで決済でき便利でユーザーの利用率も高い『Yahoo!ウォレット』をストアに活用してもらいたい。また、これまでストアから頂いていた『Tポイント』の手数料も当社が負担することにした。これにより『Tポイント』でどんどん販促して頂きたいと考えている」

──新プラン導入で相当数の出店者にとって実質、出店料が値上げとなる。出店者からの反発はないのか。
 
中谷 「そういう声も頂いている。逆に手数料率が分かりやすくなったなどのプラスの声も頂いている」
 
──どちらのほうが多いのか。
 
中谷 「正直、今のところ半々だ」
 
畑中 「だんだん声は多くなってはいるが、現状では我々の想定以上に出店者からの反響は少ない」
 
──現行と新プランで料金的に差異が出てくるラインは。
 
中谷 「月商500万円くらいがラインになると思う」
 
──月商500万円を越える出店者は全体では恐らく1割程度ではないか。
 
畑中 「概ねそうだ」
 
──月商500万円以下の出店者は現行のプランと比べてどのくらい月額費は値上がりするのか。
 
中谷 「月商500万円ゾーンのストアであれば数百円や数千円単位の値上げだ。月に5~10万円程度の売り上げのストアなどは値上幅も大きくなる」
 
──最大では。
 
中谷 「マックスで3万円くらいだ」

畑中 「400~500万円のレンジの出店者に関しては、値上げ幅はそんなに大きくない。逆にもう一段階、がんばってもらえれば現行のプランよりも安くなるストアがそのゾーンにはたくさんいらっしゃる。ですから、楽天に10の在庫を入れているが、ヤフーには5しか在庫を入れていないストアであれば、もう少しヤフーに在庫を入れてもらったり、楽天に出しているのに、ヤフーには出していない商品を出して頂くことで、次の段階に移行できるはずだ。つまり今の段階で比較すると手数料率は高くなるが、もうちょっとがんばって頂くことで今よりも安くなるというストアはゾーンとして多い」
 
中谷 「値上げになってしまうストアには大変、申し訳ないと思っている。その分、今後、手厚く各ストアの取扱高を上げるための施策を検討している」
 
──具体的は。
 
中谷 「明確に言える部分がまだ少ないが、例えばストアが売上高を上げるのに最も効果的な施策の1つであるモール内の広告について、料金を値下げすることも考えている。このほか、SEOやSEMの対策やシステム改善も常々やってきたが、こちらもより"爆速"の体制で進めていく」
 
──それによってどのくらいの流通総額のアップを見込んでいるのか。
 
中谷 「この1年間でプラス500億円くらいは伸ばしたい。前年はおよそ2000億円だったので2500億円まで拡大したい」
 
──なぜ、この時期にプラン改訂だったのか。
 
畑中 「当社では前年度にアスクルとの資本業務提携やTポイントとの提携などを発表させて頂いた。これらの具体的な取り組みが本格化する今年度は我々にとって『勝負の年』となるわけだ。モールについても、『戦う体制』を今一度、作ってがんばっていくタイミングは今だろうと。そこで出店プランもあわせて一新した」
 
──仮想モールでは常に楽天の後塵を拝している。この立ち位置を変えられるか。
 
畑中 「現行の3つの出店プランを作ったのは実は私だ。この時は対抗上、同じ3つのプランでいずれも楽天より低い手数料率にして作ったんですね。モールでは先をいく楽天よりも少しでも安く、楽天よりもいい条件で、というところを目指して当時は作ったが、しかし、いつまでも楽天さんの後追いでは(その差も)そのままだ。我々としての色も作れない。ヤフーのコマースとして立ち位置を明確にして、改めてヤフーとしての強み、総合力として活かすためにプラン改訂をさせて頂いた。先ほども申し上げた通り、出店者への支援策は今、社内で検討しており、7月以降のタイミングでどんどん出していきたいと考えている。流通総額を上げることが我々のミッションで、それが結果的にストアの満足度を上げることだと思っている。ストアに喜んでもらう売り場ということではいろいろネタも仕込んでいる。年末商戦に向けて随時、実施していきたい」

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