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百貨店通販の新たな挑戦、勝ち残りに向けた戦略は?

1-1.jpg大手小売りが通販企業を買収したり、ネット販売事業に本腰を入れてきている中、かつてはカタログ通販市場をけん引した百貨店通販も大競争時代での勝ち残りに向けた取り組みが急務となっている。主力のカタログ事業で売り上げを堅持しつつ、店舗とネット販売などとの境い目がないオムニチャネル時代の到来を見据えた戦略立案が共通の課題のようだ。強みでもある百貨店店頭との連携強化や、成長エンジンとして期待するネット販売市場での仕掛けなど、高島屋とJFRオンラインの両社が挑む新たな取り組みについて見ていく。

高島屋、オムニチャネル化加速

高島屋は、中期経営戦略のひとつとして、実店舗とネットの融合をはじめとした"オムニチャネル化"に全社を挙げて取り組む。商品や顧客情報をすべての販売チャネルで共有することで経営効率を高めるだけでなく、いつでも好きなチャネルで買い物ができるようにして顧客満足度の向上につなげる。

 オムニチャネル化の推進には、実店舗での取り組みも含め、向こう5年間で総額130億円を投資する計画で同社の本気度が伝わってくる。

 今期(2013年3月~)は、オンライン会員86万人と百貨店のハウスカード会員210万人の顧客データを一元化し、効果的にアプローチできるようにするほか、昨年6月に子会社化したセレクトスクエアとの連携強化に本腰を入れる。

 前期は、「高島屋オンラインストア」とセレクトスクエアのサイトで互いにバナーを貼り合うなど送客面での施策が中心だったが、両サイトのIDの統一やカードポイントを相互利用できるシステム連携を急いで利便性を高めるのに加え、出遅れていたファッション商材については「セレクトスクエア」をネット販売チャネルの軸とし、年内をメドに百貨店ブランドを投入する。

 まずは、買い取り仕入れを行っている百貨店の自主編集売り場の商材からスタート。婦人服ではヤングキャリア向けの「スタイル&エディット」や紳士服の「CSケーススタディ」を皮切りに、「インポート子供服」などで品ぞろえの共通化と在庫一元管理に着手し、年間12億円規模での取り組みを実施する。

 今後は、通販サイトに店頭在庫表示機能を導入することも視野に、ネット起点の来店促進につなげる。

 並行して、セレクトスクエアの持つフルフィルメント力などを活用し、商品をアップするまでの時間や、消費者に届けるまでのリードタイム短縮を図る。

 中期的には、百貨店で扱う商品をすべてネットで販売できるようにするために、顧客データベース、商品データベース、ロジスティクスなどをゼロから組み立て直す必要もあるという。

 オムニチャネル化に向けては、百貨店店頭でもICT(情報通信技術)の活用に着手する。デジタルサイネージによるバーチャル試着や、ハンガーを手にとると商品のコーディネート写真や動画情報が表示されるインタラクティブハンガーの導入など、商品の魅力を伝えるデジタルコンテンツを積極的にとり入れた店舗運営を新宿店で試験的に開始する計画だ。

KPI検証導入組織改正も実施

 一方、高島屋のクロスメディア事業部では次の成長ステージに向け、従来の売り上げ分析だけでなく、KPI(重要業務評価指標)検証を取り入れて課題を細かく洗い出す取り組みを始めた。

 例えば、ネット販売ではセッション数やコンバージョン率、アクティブ客数、新規客数、注文件数、客単価、セレクトスクエアへの送客などの詳細を把握。こうしたKPI検証をカタログにも適用することで、各種施策に対する効果検証の精度を高めるほか、予算未達の項目があれば追加のコストを投入しやすいようにした。

 同時に、4月1日付けで組織改正を実施し、3部長制から12グループ長制に移行した。商品政策を担う営業部をカテゴリー(ファッション、雑貨、リビング、食料品)ごとに4グループに分けたほか、商品の見せ方や売り場作りは3つのチャネル(カタログ、ネット、テレビ)別とし、集客を担うストラテジックプラニング&マーケットや総務・経営管理、システム、ロジスティクス、カスタマーサービスの各グループを設置。業務を細分化することでよりプロフェッショナルの育成につなげるほか、責任と権限を12人(兼務含む)のグループ長に委ねて意思決定のスピードを速める。

 新体制下では毎週月曜日にグループ長を集めたミーティングを行い、各グループの課題を抽出して共有。火曜日にはそれぞれのグループで課題解決に向けた議論を行う。

JFRオンライン、百貨店との連携深める

1-2.jpgJFRオンラインは、グループの百貨店と連携を深めて相互送客につながる施策を強化するほか、消費者の生活様式に合わせて商材を提案する新カタログを創刊し、新規客の獲得を狙う。

 同社は前年上期(2012年2~7月)に、大丸京都店などと双方の媒体・チラシを同封して送り合い、コストを抑えながら見込み客にアプローチする取り組みを開始したが、下期にはさらに連携を強化。9月下旬に京都店名を冠した「大丸京都店通信販売カタログ」(A4判32ページ)を創刊し、約10万部を京都店の顧客に配布した。

 百貨店側と連携してMDを組み、通販の売れ筋である煎茶や梅干など食品を中心に展開した。

 同社は関西エリアに強い顧客基盤を持つため、京都店名でのカタログでは通販顧客だった休眠客の掘り起こしや、低稼働の店頭客の活性化につながったほか、配布先とは異なる消費者からの注文があるなど通常の通販カタログにはない購買行動が見られたという。

 「大丸京都店通信販売カタログ」は11月と今年2月にも24~36ページのボリュームで配布。当初は食品を前面に出して展開したが、百貨店店頭の売り場面積が縮小しているリビング商材も厚くするなどMDを修正して顧客の反応を検証し、グループとして一定の成果を得たことから、今期も継続して取り組む。

 また、事前に実施した折り込みチラシで反応があった大丸梅田店との取り組みでは、10月末からの2週間、11階イベントスペースに「大丸・松坂屋通信販売」の看板を掲げた期間限定店を出店。百貨店で扱う商材に比べて2~3割安いという通販カタログのヒット商品を販売した。

 第1週はカシミヤのニットやストレッチ素材のパンツなどファッションアイテムを中心に販売。通販ならではの幅広いカラーバリエーションやサイズ展開を見せた。

 第2週は食品とリビング商材をメーンとし、リビングは寝具や小型家電、食品は菓子やレトルト商品などを小口化して購入しやすいよう工夫した。

 店頭客は通販商材を毛嫌いすることなく、布団など百貨店での取り扱いが少ない商品がよく売れたが、訪問者は百貨店顧客がほとんどで、通販客を百貨店に呼び込むことは今後の課題という。

 今期は、同社の事業基盤となる関西地域ではなく、首都圏にあるグループの百貨店にも期間限定店を出店したい意向だ。

 また、リアル店舗の活用では、昨年12月に食品スーパーの旧大丸ピーコックの首都圏10店舗に「大丸・松坂屋通信販売」のコーナーを設け、布団などのリビング商材や保存食品など30品を展示。薄いカタログを置いてレジで注文を受け、後日、商品を自宅に届ける取り組みを試した。

 今回、ファッション商材は扱わず、各アイテムにはPOPをつけて商品を説明。店ごとに違いはあるものの、消費者の反応は良く、1~2万円台の布団がよく売れた。

 大丸ピーコックは今年4月にイオンの傘下に入ったが、JFRオンラインでは取り組みの継続も視野に、リアルとの連携強化を図る。

新規顧客開拓へカタログを創刊

 一方、4月1日付けで同社の榎本朋彦社長は、親会社のJフロントリテイリングで経営戦略統括部長グループIT新規事業開発担当に就任。新たなミッションとして、グループのウェブビジネスを包括的に見るほか、"オムニチャネル化"をキーワードにウェブと店頭とで顧客を送客し合う体制を整備し、グループ全体として売り上げを高めるための施策の具体化を急ぐことになった。

 主力のカタログでは新客の開拓に向け、ライフスタイル切りの新媒体を初めて展開。4月25日に創刊した「おいしさキッチン」(A4変型・48ページ)では、台所で過ごす時間が楽しくなるような調理用品やキッチン雑貨、ファッション商材、食品などを消費者の生活様式に合わせて提案する。

 巻頭では丹波焼や伊賀焼の和食器と若狭塗りの箸を特集。また、同一ページ内で和食器と和菓子、洋食器と洋菓子を販売するなどの試みにも着手している。

 新カタログは若手メンバーが中心となって取り組み、新しい取引先や商材を開拓して主要顧客層よりも少し若い世代の獲得にもつなげたい意向。そのため、カタログはスマホなどのタブレット端末にも対応し、気になる商品があれば「Dmall」サイトに遷移して購入できるようにした。


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