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広がるネットスーパー  巨大流通、ネット主戦場へ、通販は業態超えた競争に

流通業界全体でネットを主戦場とした競争が始まっている。百貨店やGMS、スーパー、コンビニなど各業態はそれぞれの商圏でその役割を果たしてきた。昨今、実店舗を構えて来店客を待つビジネスモデルから、自ら顧客を獲得する形に変化している。その1つが「ネットスーパー」だ。一方通販企業はこれまで実店舗で取り扱いのない独自商品でユーザーを開拓し、店舗流通とは一線を画してきた。しかし、流通各社がネットの活用を積極化したことにより、通販各社は業態を越えた戦いを余儀なくさせている。各社がネットスーパーに参入した背景やネットスーパーに取り組む各社の現状をみてみる。
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将来食品小売の5~10%を占有

 ネットスーパーは2000年以降に西友やイトーヨーカ堂が「食品など店舗の商品をネットで販売し、即日配送する」ビジネスモデルでスタートし、その後、サミットやイオンなどが相次いで参入。最近では百貨店やコンビニでも開始し、定義付けができない。なぜ、流通各社は「ネットスーパー」に参入するのか。

 「将来的に食品の流通総額40兆円の5~10%を占有する市場性がある」(某社のネットスーパー担当者)ためだ。店舗出荷型ネットスーパーにおいて、店舗売上高の5~10%を超えると店舗運営に影響が出るため、少なくとも2~4兆円の規模となる見方だ。ただ、昨今では上限なく受注を処理できるとして、配送センターから出荷するモデルも出現。「独立後の採算が見込めれば、専用配送センターから出荷するモデルが増えそうだ」(同)とし、さらに大きな市場が予想されている。

 ただ、現状のネットスーパーの市場規模はまだ小さい。「現状は予想する市場規模の1割未満。拡大の余地がある」(同)としている。また、「参入企業の増加で認知度が高まっており、将来の成長が見込める」(大手コンビニ某社)という。

導線の短縮化が小売の成長力に

 では、流通各社にとってネットスーパーが果たす役割とは何か。ローソンがらでぃっしゅぼーやと合弁会社でネットスーパーを行うらでぃっしゅローソンネットスーパーはこう指摘する。「小売の歴史をみると顧客の利便性を追及し成長力を高めてきた。次に顧客に近づく業態が『ネットスーパー』だった」。

 小売業界の歴史を振り返ると、ターミナル駅への出店や、多品目を販売する利便性で流通の中心を担っていた百貨店。消費者の自宅と店舗の距離を縮めてGMSやスーパーが拡大した。また、フランチャイズ展開をすすめるコンビニは店舗数を増やしながらより身近な存在として成長した。

 こうした歴史を背景とし、次に顧客との距離を縮めるビジネスモデルとして挙がったのが、自ら顧客を開拓できる"ネットスーパー"だ。「究極的に言えば、ネットを活用することで顧客の冷蔵庫と直接つながることができる」(同社)という。

 果たして、顧客の支持を得る事業者は現れるのか。百貨店やコンビニ、GMSの状況を見てみる。

百貨店顧客との接点拡大へ

 百貨店は、ネット販売事業拡大の起爆剤としてネットスーパーに期待している。エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の阪急キッチンエールに続き、三越伊勢丹通信販売は昨年10月、大地を守る会と組んで展開してきた食品宅配サービスを拡大。「三越伊勢丹エムアイデリ」として参入した。

 三越伊勢丹通信販売は「顧客接点の拡大」が狙い。日常的に良質な商品や生活を求める百貨店ユーザーの志向に合わせ、デパ地下で扱う有名店の惣菜や菓子などに加えて、グループの持つ食品スーパーの商材を扱う。比較的に年齢の高い顧客層を意識し、週刊カタログを発刊して電話で注文を受けている。

 同社は3年以内の黒字化を目指して百貨店店頭でサービスを紹介。今後はウェブ限定商品やセールの実施などを行い、ネットを主要受注ツールに育成していく考え。

 ネットスーパーの業態であっても顧客は「百貨店」のサービスと受けとめている。同社ではネットスーパー専用の席数をこれまでの3倍に増やして対応する。

コンビニ認知活かし流通量拡大

 ローソンがらでぃっしゅぼーやと合弁会社を設立し、らでぃっしゅローソンスーパーマーケットとしてネットスーパーに参入した。これまでコンビニは店頭を拠点に利便性向上を軸に展開してきたが、店頭だけで利便性を高めることが難しいとしてネットスーパーを開始した。
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 ローソンが目指すものは、有機野菜や無添加食品を好むユーザーの拡大だ。らでぃっしゅぼーやから商品供給を受けることで、商品の安全性を担保。ローソンのポイントカード「Ponta」会員約4000万人に向けて訴求し流通量を増やすことで、高額とされている有機野菜など「安心・安全」食品の低価格化を目指す。スーパーなどとの価格差を縮めることで市場を拡大したい考え。

 今後、同社はローソンとらでぃっしゅぼーやと連携しオリジナル商品の開発を目指す。流通量を増やすことで低価格化が見込めることから、ローソンの店舗での取り扱いも視野に入れるようだ。

「買い物弱者救済」役割果たす

 一方で、GMSやスーパー各社は取り組みを加速させている。「悪天候の日は顧客が他社ネットスーパーに奪われる。顧客の囲い込みと商圏外の顧客開拓を同時にできるネットは必須」(ネットスーパー)としている。

 GMSやスーパーがネットスーパーに参入する目的は「店舗の補完」だ。坂の多いエリアに住み外出が不便な顧客や、近所に高級スーパーが多い都心部の消費者、高齢者など店舗に来店しにくい「買い物弱者」救済の一環としてネットスーパーに取り込んでいる。

 イオンは2008年からネットスーパーを開始。「店舗の補完」をコンセプトとし、システム運用を行う本部が店舗を運営する各カンパニーに対して商品を提案。各カンパニーが主導となり顧客ニーズなどを見ながら取り扱い商品を決定する。

 店舗出荷型ネットスーパーに発生する店舗ごとの受注件数のばらつきを解消するため、イオンでは三重や岐阜、青森、新潟で、1店舗のカバーエリアを全県とした「全県配送」を展開。3~4月をメドに東北全県での対応を開始する予定だ。収益性が見込みにくいとされているネットスーパーの弱点を補完している。

 大手GMSのネットスーパー拡大はネットスーパー参入企業増加の呼び水となっている。昨年10月からライフが東京・神田和泉町店を第1号店とし、ネットスーパーを開始。ライフは1970~80年代頃に宅配サービスを行っていた実績があるという。取材は「開始したばかり。時期を見て改めてお願いしたい」(同社)とした。

通販への影響は?
増える消費者の選択肢、問われる通販企業の"存在感"


これまで安心・安全のコンセプトや、機能性商品の販売など付加価値で訴求し、実店舗との差別化を図ってきた通販業界。しかし、GMSやスーパー、百貨店、コンビニがネットスーパーを加速させることで、通販各社は彼らと競合し、業態の垣根を越えた競争を強いられることになりそうだ。ネット販売市場における消費者の選択肢が増える中で、通販企業は今後、より自社の強みを磨く必要がある。

 ネットスーパーの主力商品である食品で見てみる。食品通販は有機野菜や無添加加工食品、地域の特産品を取り扱ってきた。生産履歴の管理や生産者、産地、メーカーなどを明確化することで安全性を担保し、その安全性を価格に反映してきた。ただ今後、大手流通各社がネット販売市場で頭角を現せば、これまで培ってきた食品通販の強みである「安心・安全」が標準的なサービスになる可能性もある。

 というのも、ネットスーパーに参入する流通各社が「安心・安全」の取り組みを積極化しているためだ。らでぃっしゅローソンスーパーマーケットは取り扱い商品の8割をらでぃっしゅぼーやが供給する。同様に、三越伊勢丹通信販売も大地を守る会からの商品提供を受けている。生産履歴の管理などノウハウが必要な品質管理を既存の食品宅配と組むことで補完し、「安心・安全」を担保しているわけだ。

 また、ネットスーパーに取り組む大手GMSでは、従来から店頭で生産者情報を公開した野菜の販売するほか、原発事故後の食の不安を受けて米や野菜の放射能検査を実施。実店舗で扱うこれら食品をネットスーパーでも販売している。

 これまで「安心・安全」の役割を果たすことで、消費者を獲得してきた食品宅配。安心感への対価として店舗流通よりも2~3割高額な価格設定となっていた。だが、ネットスーパーを通じて消費者にとって馴染みのある価格帯で食品がネット販売されれば、店舗販売と宅配事業者の価格が明確に比較される可能性がありそうだ。

 今後、厳しい市場が予測されるが、食品宅配企業がこれまで存在感を示してきたとは言いがたい。食品宅配の幹部は「当社を利用した顧客が競合を利用し、また当社に帰ってくる。食材宅配企業間でユーザーが移動している」と話す。安心・安全の高まりで新規客層が増加しているものの、企業に対する愛顧心はそれほど浸透していないのだ。ネットスーパーが加速する前に、自社のブランディングを再構築する必要がありそうだ。

 今回、食品通販を例に考察したが、機能性などの付加価値商品を販売する通販企業全体にも共通のことが言えるかもしれない。ネットスーパーの目標客単価は6000円程度だが、それ実現するには単価の低い食品だけでは難しく、衣料品や家具、化粧品などの買い回り品を増やしているためだ。

 食品で顧客との接点を拡大し、衣料品や日用雑貨とのクロスセルを推進するネットスーパー。1つのサイトで買い物が完結する利便性は高く、大きな流通規模を獲得する可能性がある。

 巨大流通企業との戦いが本格化している中で、通販各社はその存在感を示す必要がありそうだ。



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