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検証・悠香の自主回収、茶のしずく回収騒動拡大のなぜ、品質保証の甘さ"アキレス腱"に

悠香(本社・福岡県大野城市、中山慶一郎社長)の「茶のしずく石けん」自主回収を巡る事態は今年8月、ついに集団訴訟にまで発展する様相をみている(前号既報)。強い単品商材で市場を創出し、創業からわずか8年で300億超もの売上高を誇る企業へと急成長した悠香の姿は、通販の可能性を業界内外に示した。だが、今回の騒動は消費者に大きなインパクトを与え、「悠香」というコーポレートブランドの存在を著しく毀損しかねない事態にまで発展している。ただ、製品自主回収は悠香に限らず、どの企業であっても起こり得る事でもある。なぜこれほどの事態にまで発展してしまったのか。
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67症例全てが「悠香」を示す

 5月20日、悠香が発表した「茶のしずく石けん」の自主回収は、通販業界を激震させた。通販事業者のみならず誰もがその動向に注目する企業であっただけなく、創業来成長をけん引してきた「茶のしずく石けん」約4650万個全製品の回収を発表したためだ。小麦アレルギーの発症という症例の深刻さや、女優の真矢みきさんを起用した"あきらめないで..."のフレーズが印象的なCMが消費者に深く浸透していたこともあり、回収の発表は大手メディアにも大々的に取り上げられた。

 一方で厚生労働省の自主回収を巡る発表経緯には当初、不可解な点もみられた。アレルギー発症の要因とされた「加水分解コムギ末」が湿潤剤(しっとり感など化粧品の使用感を調整する目的で使われるもの)として広く化粧品業界で利用されていたにもかかわらず、医療機関より厚労省に報告されたアレルギーの症例67例全てが、"茶のしずく石けん使用者"と製品に原因があることを示していたためだ。

 そこには成長企業にありがちな競合他社からの密告の可能性、学会発表を控え加水分解コムギ末の研究を進める皮膚科医と厚労省に症例報告を行った医療機関が重複したこともマッチポンプではとの疑念を残した。

 その後、7月に国民生活センターが216件の危害情報が寄せられたことを発表し、8月には電話相談会を実施した4都府県の弁護士会が500件超の相談を受けて弁護団を結成。断続的に続く悠香を巡るセンセーショナルな動向は常に大手メディアの格好の餌食となり、その都度、消費者がリマインドされる状況が続いた。

後手の対応で変わるシナリオ

 化粧品大手のある幹部は自主回収に至る要因について次のような見方を示す。

 「やはりこういうことって最初は小さな穴だったものが徐々に大きなひび割れになるのと同じで、その辺の見極めじゃないですか。どんな企業であっても小さな穴は持っている。その穴をどう埋め込むかを一生懸命やって崩壊しないようにして成長してくる」。

 大事は小事より起こる。確かに一連の経緯を振り返ってみると、悠香にとって分岐点となっていたであろうポイントがいくつか浮かび上がってくる。

 一つは、09年末の時点で相模原病院の担当医が加水分解コムギ末配合の石けんについてアレルギー発症の可能性を学会発表していたこと。担当医はこの時点で「発表前に悠香に原料を要求したが断られ、県の薬務課を通じて働きかけた結果時間はかかったが昨年3月に悠香の担当者の訪問を受け、原料の提供を受けた」としている。悠香はこの点、「昨年3月から5月にかけて相模原病院と福岡病院に原料を要求されたが、原料は手触りや質感を決定づける要素であり、フェニックス社にもノウハウがあったと思うので渡すことにためらいがあったため、原料提供を断り、製品を渡した」(商品部品質保証課・竹田典雄氏)としているため発言が食い違う。だが、いずれにしろこの事が後に続く厚労省への症例報告と注意喚起通知、学会発表に発展する転機となった可能性がある。

 もう一つ、10年初頭には島根大学医学部皮膚科の千貫祐子助教も患者が「茶のしずく石けん」によるアレルギー発症の可能性を診断しており、「その時点で悠香に連絡。回収すべきと伝えた」という。ただ、相模原病院の学会発表とはリンクしておらず、発見の端緒は全く別だったという。

 これら医療機関による指摘が行われた09年~10年、国センには医師の診断で症状が重篤とされるアナフィラキシー(危害情報の中でも重篤なもの)と判断された症例が6件寄せられていた。発表以降は55件に急増したが、回収発表以前であれ、事業者が認知できない件数とは言い切れない。

 最後に今年5月の回収発表。悠香は以降、DMによる回収の告知や全社員による電話対応で消費者対応に努めた。だが、「過去に例のない新しい症例だっただけでなく、専門的な知識を必要とする事案」(竹田氏)として、事情に通じる限られたスタッフで対応にあたったことも"電話がつながらない"といった消費者の不満を招き、「顧客名簿を持つ通販の強みを活かしてDMを回収ツールに利用した」(同)ことも、「告知が不十分」とする国センの緊急記者会見、ついには集団訴訟の引き金ともなる。

成長企業が抱え続けたリスク


 通販大手のある幹部は、製品の欠陥を早い段階で認知できなかった原因をこう指摘する。

 「これまで悠香は優れたクリエイティブや媒体戦略の強さで成長してきたが、製品の品質の担保は1人の経営者の力だけではどうにもならない問題であるということ。そこに急成長した企業ゆえの盲点が潜んでいたのでは」。前出の化粧品大手幹部も「これほど消費者から"安心・安全"が要求される時代の中、企業はよほど『品質保証』に気を使わなければならない。リスクマネジメントを行う担当者の不在が今回の事態を招いたのでは」との見方を示す。症状の重篤さを考えると、症例が新しい知見であり、対応が難しいものであることを差し引いてもより迅速な対応が可能ではなかったか、企業としての体制に不備がなかったかを考えざるを得ない。悠香は今年1月に研究開発部門などを分社化し、専門性の高い人材の確保や人材育成に着手し始めていた。回収は、その矢先の出来事だったといえる。

 また、化粧品の受託製造事業者の代表は、「製造販売業の取得は簡単だが、運用という面では難しい。そこに自主回収につながる要因があったのではないか」と話す。

 そして悠香の「茶のしずく石けん」に配合されていた加水分解コムギ末「グルパール19S」の存在。業界関係者によって示されるこれらの指摘は、薬事法の遵守といった形だけでは成し得ない、化粧品販売に係る「品質保証」の問題をクリアすることがいかに難しいものであるかを浮かび上がらせてくる。

【悠香の製品自主回収に対する業界関係者の見方】

■「企業としての脆弱性はあったと思う。危ない芽に対してどうリスクを取っていくのか、シナリオを描ける人がいなかった。皮膚科医の問い合わせを受けた時点など、ある時点でシナリオはどんどん変わっていく。悪い方向か平行線なのか、読みの部分だがそこのリスクマネジメントを考える人がいなかったのではないか。消費者が安心・安全にこれだけ厳しくなっている中、品質保証は業界をあげて取り組まなければいけない」(化粧品大手A社幹部)

■「『製造販売業』の運用面に問題があったのでは。製造を依頼される際、ほぼ全ての取引先に"委託先の社名を消したい"と言われるといっていいほど販売各社の製販業認可に対するモチベーションはある。委託先の不祥事で被害を被らないようにするためや、他の製造業者にスイッチしやすいためだ。ただ、製販業は認可は容易いが運用はそう簡単でない」(化粧品受託製造B社代表)

■「単品商材に依存する形態の危うさを教訓として残すことになった。これまで悠香はクリエイティブ力や媒体戦略の強さでここまで成長してきたが、製品の品質の担保は1人の経営者の力だけではどうにもならない問題であるということ。そこに急成長した企業ゆえの盲点が潜んでいたのでは」(化粧品通販大手C社幹部)

■「HPを見ても回収を前面に出して謝罪している雰囲気は感じられなかったし、メディア対応も積極的には感じられなかった。報道記事で電話がつながりにくく相談対応に苦労されていることは伝わってはくるが、もっとやりようがあったのでは。起きてしまったことは仕方ないがメディアに積極的に働きかけるなど、それを投げ出ささずに全社一丸となってまじめに取り組んでいるという話がリークされてくれば消費者の中には"応援していこうか"という方も出てきたと思う。その辺のメディアコントロールは一切なかった」(化粧品大手D社幹部)

■「化粧品業界は皮膚科やアレルギー学会などとがっちり手を組んでやっている。だからその方面から問題提起されることは少ないという印象。ただ今回はその学会サイドから指摘されている。その辺り行政や業界・学会サイドへの対応が疎かだったのかなと感じる」(業界紙E社記者)


悠香の製品回収が問うものは?
成長の影に潜むリスク、通販各社共通の課題に


悠香の自主回収が通販各社に示す教訓とは何か。ある化粧品大手の幹部は次のように指摘する。

  「『茶のしずく石けん』がどれほどの売り上げ比率か分からないが(悠香の中山社長は今年3月に本紙が実施したインタビューで6~7割と説明)300億円近い市場が野に放たれて"あー良かった"と見るのではなく、チャネルの枠を超えて競争が激化する中、通販各社が協力して業態の健全性を作りあげるきっかけにしなければいけない。ようやく社会的認知を得てきた通販が、"やっぱりか"と眉唾で見られてしまう」。

 民間信用調査機関の調べでは、化粧品通販市場の4~7月の売上高総計が前年同期比95%というデータもある。ファンケルの前期決算は前年比5・8%減、オルビスは同3・6%増だが、今中間期は減収に転じている。通販市場をけん引してきた大手2社の動向を見ると、これまでのような成長が、容易には望めない市場となっていることは明白。回収は消費者の信頼を得、市場の拡大を図る上で「品質保証」がいかに重要であるかという課題を通販各社に突きつけるものだろう。

 今回、皮膚科医からの指摘で明らかになったが、悠香では業界や学会との関わりを「西日本化粧品工業会に籍を置いているが、加盟数年と日が浅いこともあり、なおかつ販売を主体としている。過去の薬事法の流れからいくと製造業者が成分や製法、技術的なことを知っているが製造販売元として責任を負うようになり、(品質保証など技術、学術分野の取り組みを)やろうとする中で業界や皮膚科医の先生方との付き合いもまだほとんどなかった」(商品部品質保証課・竹田典雄氏)と振り返っていた。

 悠香の担当者の言葉からは、さらなる成長を目指す上で欠かすことのできない品質保証体制を構築する、まさに過渡期にあった悠香の苦悩が窺える。

 「有り難いことに売り上げが急激に伸び、売上高だけみれば業界でも何番目に入るかというところまできたが、短期間であったために知らないことも多かった。(皮膚科医らとの情報交流も)新興の企業なら接点を持つことは少ないと思うがそれら企業と同じ。徐々に学術的なことが分かり、情報を蓄積していこうという状態とクロスした」(同)。

 回収にあたり社内配置を変え、回収処理や電話対応に一丸となって臨んだ姿勢が誠実さに欠けるとは思われない。

 ただ、新しい知見であれ、症例の重篤さを考えると、事態の悪化を最小限に留めるシナリオを描ける機会はあったのではないか。今回の事態を"小さな穴"とするには違和感があるが、どの企業にもあるであろう小さな穴。通販各社は今回の事態を他山の石とする必要がある。

【集中連載】









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