JSCの前期決算を振り返ると売上高は前年比2・2%増の1115億300万円、営業利益は同1・8%増の156億8000万円、経常利益は同0・4%増の157億2200万円だった。最終利益(当期純利益)に関しては同1・5%減の91億6700万円と前年比で若干のマイナスだった。しかしこれは3月の東日本大震災の影響が強かったようだ。
同社では地震発生当日から放送をストップ。その後、6時間、12時間と段階的に放送を再開したが結局、合計261時間にわたって休止した。震災発生に伴い、通販事業を休止したのは何もJSCに限ったことではない。ただ、実は3月上旬、つまり震災前までのJSCの業績は非常に順調で仮に震災がなかった場合、それまでのペースを勘案すると売上高がさらに積み増しされた可能性があったことはもちろん、前年比で減益だった純利益も100億円を突破していた可能性もあったようだ。
とは言え、無論、別表を見ても分かる通り、数年前のような大幅な成長というわけでは今はもうない。競合と鍔迫り合いを絶えず行いながら、株主からの豊富な資金と人員を駆使して自社通販番組の同時再放送を行ってくれるケーブルテレビ(CATV)局に営業攻勢をかけ、視聴可能世帯数を拡大させてきた急成長期は終わった。
さらにテレビがアナログ放送の時代は、CATV経由でNHKと民放5局が入っていない2、5、9、11と4つの『空きチャンネル』で通販番組が流され(※東京の場合)、視聴者は民放を視聴する感覚でJSCの通販番組を視聴していたJSCなどの通販専門チャンネルにとって「恵まれた状況」もテレビがアナログからデジタルへの移行が進む今、大きく変わりつつあるわけだ。
とは言え、それでも前期の売上高は年商1000億円を超えてなお創業以来、14年間連続で増収。利益も経常ベースではわずかながら増益を確保しており、安定的に成長を持続させていることは賞賛に値する。
「基本路線に全く変更はない。"番組力"と"商品力"を着実に愚直に強化してきただけ」。JSCを率いる篠原淳史社長は同社の成長戦略のようだ。
非常に地味な施策ではあるが、これこそが今のJSCにとってもっとも有効な施策であり、圧倒的な販売力を持つ日本最大の通販専門チャンネルとしての利点をフルに活かせる成長戦略のようだ。
既存顧客の購入回数と単価向上
視聴可能世帯数の劇的な増加はもはや難しく、ややもすると減りかねない状況下では必然、これまでのように新規顧客の獲得による成長は現実的ではない。であるならば既存顧客に対し、どうアプローチして購入頻度や単価を上げていけるかがこれからの成長戦略上、重要になるわけだ。
つまり、篠原社長のいう番組力と商品力の強化とは言い換えれば、コア顧客層である40、50代などへ響く番組や商品を作っていくということだ。
この一環としてJSCは2年前に放送をはじめ、今や看板番組にまで成長したのが、アラフォーをターゲットにした『ヴィーナスナビ』とオリジナルブランドを紹介する『ショップチャンネルシグネチャー』だ。この2番組は単品の商品提案ではなく、コーディネーションで訴求するコアターゲット層に向けたライフスタイル提案型番組で、番組の定着化が進むと共に通常の番組よりも複数点購入が増えるという傾向が見られてきたようだ。
こうした施策を進めた結果、実際、前々期は不況の影響などで落ち込んだ客単価が前期は「番組力や商品力の強化で客単価は確実に回復した」(篠原社長)としており、狙い通りの効果が出ているようだ。
有力店舗、企業とのコラボ番組
さらに番組力、商品力の強化のための施策として積極化させているのが他の企業とのコラボ番組だ。例えば、これまで有名百貨店や人気雑誌と組んだコラボ番組を実施してきたがこれらと同様、前期だけでもセレクトショップを展開する「ユナイテッドアローズ」、靴やカバンの高級ブランドの「ランセル」、米人気ファッションブランドの「マーク ジェイコブス」など有力ファッションブランドや訴求力の高い有店舗小売業と組み、それぞれの基幹店などから生中継でコラボ番組を開始させている(写真=昨年11月に放映したユナイテッドアローズとのコラボ番組の様子)。
ファッションブランドだけではない。前年は楽天市場と組み、同モール出店者が販売する人気商品を紹介する番組や今年5月には化粧品のくちコミサイトである「@cosme」と連携して化粧品の販売を行っている。
また、JSCでは月に1回のペースで現地からの中継または東京のスタジオ収録の形で特定の地域の産品紹介に特化した「日本を見つけよう」の放送を行っているが、同番組には最近、その時に取り上げられた県の首長が出演するケースが目立って増えてきている。最近では鳥取、福井、長崎県の各知事や石垣島の市長などが出演を果たしているようだ。
高い知名度と人気を誇るファッションブランドは通常、ブランドイメージの観点からテレビ通販への露出を避ける傾向ある。まして行政の首長がテレビ通販に登場することなど滅多にあるまい。
ところがこうしたコラボ番組は多くの場合、JSCからの要請だけではなく、むしろ相手からのオファーも少なくないのだという。世間的に知名度や訴求力の高い有力な企業であればあるほど、テレビ通販に販路を広げる際に、「どうせやるならショップチャンネルで」と最大手であるJSCに声を掛けることが多いようだ。
その結果、これまであまり通販チャネルで販売をしてこなかった非常に訴求力の高い商品を持つブランドやメーカー、有店舗小売業者などがみなテレビ通販において、JSCのパートナーとなり、彼らの訴求力の高い商品がJSCではじめて通販で紹介されることになる。すると必然的に番組力や商品力が強化され、既存顧客の客単価や購買頻度が高まる。こうした流れを引き寄せるのはJSCが日本最大の通販専門チャンネルであり、相応の販売力や顧客基盤を築いているからこそなせる「テレビ通販の王者」ならではの業だと言える。
今期も「番組力、商品力の強化」という基本戦略は踏襲。新たなライフスタイル提案型番組「大人ガールズプロジェクト」などの放送を開始。また、様々な企業とのコラボ番組を今期も進め、着実に「今期も増収増益を目指す」(篠原社長)としている。
◇
基本戦略は変わらず、番組と商品の強化を
ジュピターショップチャンネルの篠原社長に前期の総括と今期以降の戦略や方向性について聞いた。
Q:前期も増収、経常ベースでは増益で推移した。理由は。
「基本路線はまったく変わっていない。番組力と商品力を地道に愚直に年々、強くしてきたことが一番の理由だと思う」
Q:具体的には。
「売り上げの核となるお得な目玉商品を紹介する夜12時からの『ショップ・スター・バリュー』と正午からの『GO!GO!バリュー』における商品部隊と番組制作部隊連携がスムーズとなり、売り上げ的にも従来以上に非常に安定してきたことが1つ。あとは例えば『ヴィーナスナビ』や『ショップチャンネルシグネチャー』などに代表されるここ1~2年、取り組んできた特定のターゲット層に向けてライフスタイル提案型の番組も安定した看板定番番組に育ちつつあり、視聴者も増え始めている。視聴者が増えれば、それだけ商品の購入も増え、しっかりと売り上げを上げられるようになってきている」
Q:コラボ番組も積極化している。
「そうだ。番組力の強化という意味でコラボ番組は期待している。コラボ先は大きく『地方』と『企業』がある。地方は現在、月に1回のペースで放送している『日本を見つけよう』というある地方にスポットを当てて、当該地方の名産品や特産品を販売する番組だ。東京のスタジオで収録することも多いが、地方局にご協力頂いて、現地からの生中継を行うこともある。前期は熊本で2回、今期に入ってからも5月に長崎から生中継を結んだ。 『企業』では前期はユナイテッドアローズ(UA)さんなどと組んで、コラボ番組を行った。UAさんの場合は特に互いに様々なアイデアを出し合って、非常によい形で店舗からの中継で番組が作れたりと番組自体に勢いを感じた。今後も互いにリスペクトできる企業とコラボ番組を積極的に行っていきたい」
Q:3月に東日本大震災も起こったが、今期の状況はどうか。
「3月11日に地震発生日から261時間、番組を休止した。長期に渡って番組を止めた影響で視聴者数が減少したのと消費マインドの低下などからか4月いっぱいは厳しい状況だったが、5月のゴールデンウイークを境にほぼ元に戻った。6月もそうした傾向でひとまず安心しているが、5月以降は他社も(業績が)良かったと聞いているので、素直には喜べない(笑)。あとはまだ原発問題や電力もどうなるか分からない。消費マインドもなかなか元通りというわけにはいかないだろう。それに今年は地デジの完全移行の年であり、決して楽観はしてない」
今期も増収増益
Q:今期(2012年3月)の業績目標は。
「増収増益を目指したい。大変だとは思うが何とかやりきりたい」
Q:テレビの完全デジタル化が7月24日に控えている。影響は。
「(地デジ化の業績への影響は)あるとは思うが、ほとんどのケーブルテレビ局で『デジアナ転換』(※デジタル放送をアナログ方式に変換して再送信するサービス)を受けてくれている。(地デジ化以降は)視聴者数が大きく落ちると思ってやってきたが、想定していたよりは完全地デジ化初年度の業績へのインパクトは少なそうだ」
Q:「売り場」拡大のため、BSでの更なる枠確保や以前、保有していたテレビ埼玉などU局での放送枠確保などは考えていないか。
「すでにBS朝日、BSフジ、日本BSで放送させて頂いている。昨年も多少、枠を増やしたが大きくは増やしていない。U局(での放送枠確保について)は一旦、引かせて頂いたが(再開するかは)今から(検討する)。ただ、現段階では枠を増やしていくよりも今ある枠でどう数字をきちんと上げていくかが重要だ。新たな売り場を考えるのはその後だ」
Q:では今期の増収増益達成に向けては何をやるのか。
「やることは前期と同じ。番組力と商品力を愚直に強化していくしかない。今期も着実に積み上げていく。今期、期待している番組は今春くらいから月2回ペースで始めた30代半ばをターゲットとした番組『大人ガールズプロジェクト』。あとはあるゲスト(商品の生産者や販売者など)さんにスポットを当てて、普段、そのゲストさんが紹介しているカテゴリー以外の商品も含め、ライフスタイル提案をしている『ゲストデイ』なども定番化しつつある。前期もこうしたライフスタイル提案型番組に力を入れたことで商品を複数点、購入される方が増え、結果として一時、落ち込んでいた客単価が回復し増収につながった。こういった番組をもっと増やしていきたい」
Q:今年は震災もあり、売れ筋や商品のトレンドも変わりつつある。
「やはり節電の中でエコなどがキーワードになってくる。当社でも夏に向けて涼感寝具だったり、扇風機だったり、早くから商品の用意に取り掛かってきており、売り上げもよい。例えば、高額な扇風機を販売したが数分で完売した。こうした商品は価格ではなく、価値を評価頂ける商品をそろえることが重要だ」
Q:エコというキーワードでは100万円くらいする太陽光発電システムをテレビ通販しているところもある。
「面白いと思う。実は私も2年くらい前から太陽光発電を販売したいと言ってきた(笑)。今期に入ってから『新商品開発担当』というのを作った。例えば太陽光発電や電気自動車など、様々な商品について、まずは損益を度外視して検討してみてくれと。それらは今後の商材としてはキーワードとして外せなくなるだろう。テレビでどこまでやり切れるかを見極めながら考えていきたい」
Q:震災地支援については。「継続的に支援していきたい。第一弾として地震発生で休止していた番組を再開した日(6時間)の全売上高約8700万円と支援物資として野菜ジュースなどを寄付寄贈した。第2弾として今年5月10日から5週間に渡って『つなごう、みんなのチカラ』という被災地支援番組を毎週火曜に1時間放送した。ベンダーさんにも協力を頂き、人気商品を破格で販売し売り上げから経費だけを差し引いた5000万円弱を寄付した。10月には『日本を見つけよう東北』を放送し、被災をされたベンダーさんの商品を販売し、復興に協力していきたい。このほか、被災企業の復興を支援するファンド『セキュリテ被災地応援ファンド』にサポーター企業として参加した。お付き合いのあるベンダーさんが投資先にいる。そのベンダーさんを以前、番組で紹介した際の映像を提供して投資家募集サイトで放映して、投資家募集にも協力した。支援活動は継続的に実施していきたい」
Q:現状の課題は。
「まずは大変な今年を乗り切ることだ(笑)。新たな戦略構築は今年11月で創立15周年になるため、そのタイミングで中長期計画を見直す。あとは今回の震災を踏まえて、BCP(事業継続計画)を再構築し、何が起きても対処できる準備はしておきたい」
Trackbacks:0
- TrackBack URL for this entry
- http://www.tsuhanshinbun.com/mtos-admin/mt-tb.cgi/1153
- Listed below are links to weblogs that reference
- JSC、14期連続増収に "王者"の戦略着実に、基本の商品力と番組力の強化 from 通販新聞

