深夜枠など「売り場」拡大
昨年度に引き続き、今回もテレビ通販の売上高ベースで首位に立ったのは日本テレビ放送網だ。2011年3月期の通販売上高は前年比1・8%増の107億6900万円。3月に発生した震災の影響で10日間に渡って平日午前の主力通販枠が休止。また、通販特番の本数も前年よりも1本減ったものの、1番組あたりの平均売上高の伸びや深夜枠の放送分数の増加で増収をキープした。
当期は平日午前の主力通販枠「PON!PON!ポシュレ」が順調に推移。ポータブルカーナビや化粧下地、掃除機、オリジナル鞄などの主力商品を中心に売り上げを拡大した。演出面でも通販コーナーが紐付く生放送の情報番組本編との連携を強化。通販コーナーが始まる際、番組本編で30秒間程度、出演者が紹介商品についてコメント、番組本編からスムーズに通販コーナーに視聴者を誘導する試みを強化。さらに当期から一部の商品で実験的に開始した時間指定、日時指定の配送サービス、当日午後3時までの注文分を翌日に配送する早期配送サービスの開始で返品率も下がった。
震災の影響で3月は一定期間、放送を休止。これにより、当期の平日午前枠の総放送回数は246回と前年よりも10回ほど減ったものの、これまでの「貯金」で同枠単体の売上高の増減率は前年度比で0・3%増とプラスを維持している。
深夜枠「ポシュレデパート深夜店」も順調に推移した。前年に引き続き、深夜枠の放送分数が増えたことに加え、前述の主力商品のほか、「キッチンリフォーム」など50万円近い高単価商品の取り扱いを始め、一定の売り上げを上げるなど順調に推移し、深夜枠単体の売上高増減率は同17%増と躍進した。
通販特番は日テレによる関東地域だけの放送ではなく、ネットワーク各局と連携して全国で通販特番の放送を展開。当期は1局を除くすべてのネットワーク局やBS日テレでも特番を放送し、「売り場」を拡大した。特に昨年7月放送の「みのもんたの売れるにはワケがある!」が好調だった。ただ、前年は3月に放送した2時間特番「行列のできる通販王決定戦」が今年5月にずれ込んだため、前年度比で1本減の6本に。この影響で特番の年間売上高は同1割減で推移した。なお、ネット販売売上高はドラマ「怪物くん」などの関連グッズが売れ、同77・2%増の約5・1億円だった。
レギュラー枠が堅調、特番も増
前年は度重なる番組改編や深夜枠の減少などで苦戦を強いられていたグランマルシェが見事に復活を遂げた。
同社の前期総売上高は同15・0%増の141億円。このうち、ラジオ通販(約17億円)、カタログ・DMなどの紙媒体による通販(約11億円)、テレビ通販に紐付かないドラマやアニメのDVDやグッズ販売などのネット・モバイル単独でのネット販売(約10億円)などを除くテレビ通販(「ネットワーク局との連携通販事業」の約11億円と「テレビ通販」の約85億円を合計)売上高は同17・0%増の96億円(※前年は「ネット・モバイル通販売上高」も加えていたが、今回から未加算)だった。
番組休止など若干、震災の影響は出たようだが、前年度の不調要因の1つだった通販枠が紐付く情報番組の度重なる改変がなく、通販のレギュラー枠が安定。朝の人気情報番組「はなまるマーケット」の後に放送される主力の平日午前枠「買いテキ!通販ツウ」を中心に平日午後枠「買っトク!」、土曜昼の情報番組「王様のブランチ」内の通販コーナー「ブランチショッピング」といったレギュラー枠が好調に推移したようだ。
これに加えて、通販枠が増えた。まず、前年度は3回の放送にとどまっていた1時間の通販特番が5、7、11、2月と4回実施。さらに各特番は1回ずつ再放送を行った。加えて番組編成の事情で平日の午後など「空いた枠」に「買いテキ!」の通販映像を再編集したミニ通販特番を2~3回放映できた。
特番のほか、昨年5月から9月まで金曜午後の情報番組「金曜プリティ」内に15分の通販コーナー「お取り寄せプリティ」を新設。また、昨年4月と10月に放送されたTBSの「オールスター感謝祭」に連動して番組内の休憩タイムに 出演者にすき焼きやマグロの漬け丼、いくら丼などを提供。番組内に受注用のフリーダイヤルを表示して当該食材を通販するなどの試みを行った。増えた「売り場」に売れ筋のポータブルカーナビや羽毛布団、脱毛器、真珠やダイヤモンドなどのジュエリー、DVD付き運動ベルト「楽体(らくだ)」などを投入。3月は震災による自粛で10日程度、番組を休止するなど、若干の影響が出たようだが、それまでの好調さでカバー、売り上げを伸ばした。
昼の帯通販枠で2桁の増収に
テレビ東京ダイレクトの売上高も2桁増と好調に推移した。前期の総売上高は同10・0%増の84億9300万円。このうち、自社通販売上高は同19・5%増の36億9500万円。なお、通販枠の販売などの通販提携事業売上高(同3・7%増の45億7000万円)を含む通販関連事業は同10・2%増の82億6500万円だった。
自社通販売上高の増収は昨年10月からスタートしたテレビ東京の平日昼の生活情報番組の「7スタBratch!(ブラッチ)」内に新設した通販コーナー(月~金の帯枠)によるもの。新たな、しかも帯の通販枠を獲得したことによる「売り場」の純増のほか、同じく月~金の帯枠である朝の情報番組「ものスタmove」の中で展開する通販コーナーも堅調に推移。安眠枕「フィベールピロー」などの売れ筋商品を軸に売り上げを伸ばした。なお、当期のネット販売売上高は4億8800万円で同4・1%減だった。
「ちい散歩」が引き続き堅調に
テレビ朝日の通販売上高は同0・6%減の85億1200万円だった。当期上期から毎回ではないが、祝祭日は主力通販枠の「ちい散歩くらぶ」が紐付く紀行番組「ちい散歩」の放送分数が90分に拡大(通常は55分)。その分、祝祭日の通販コーナーの「ちい散歩くらぶ」も通常放送より放送時間が増え、平日の通販枠は約6分~16分だが、祝祭日の拡大版では30分超まで拡大。ここに掃除機やマッサージチェア、真珠ネックレス、エアコンなどの主力商品を展開し、同枠単体での売上高は伸びた。
ただ、深夜枠がヒット商品に恵まれず苦戦。3月にはファッション誌「MORE」と組んで若年女性向けにアパレルの販売などにも着手するなど新たな試みなども行ったものの、深夜枠は前年比では減収になったようだ。加えて、前年は6本あった通販特番の本数が3本と半減したこと。さら震災による通販番組休止で3月度の売り上げが落ち込んだ結果、全体では微減となった。
ヒット商品不在で主力枠が苦戦
テレビ通販では2桁減と苦戦を強いられたディノス。同社の前期総売上高は同6・3%減の543億1500万円。このうち、通販事業の売上高は同5・1%減の503億2400万円(「催事」などの直販事業は同28・0%減の18億3800万円)だった。通販事業のうち、カタログ通販事業は同0・5%減の363億1500万円とほぼ横ばいで推移したものの、テレビ通販事業は同17・6%減の82億100万円と苦戦した。
系列のネットワーク局で放送する深夜枠の効率を見直し、当該枠量を減らしたり、前年にあった土曜の昼のバラエティ番組内の料理コーナーでディノスの調理器具を紹介する通販枠がなくなったことなどテレビ通販の売り場縮小に加えて、前年はエクササイズ運動器具「シェイプビート」や「内転筋エクササイザー」などのヒット商品に恵まれたが、当期はこうした売り上げ大きく牽引するヒット商品が出ず、苦戦を強いられた。これに加え、震災で主力の平日午前枠「いいものプレミアム」の放送が3月は10日間、休止したことも減収幅を広げる要因となった。
キー局各社の次の一手は?――日テレ、工事付きなど"新商材"を強化
ここ数年で急速に拡大してきた在京キー局が手がけるテレビ通販事業。各局とも帯のレギュラー枠に加え、通販特番を増やすなど「売り場」を拡大。また、乗馬型運動器やサイクロン型掃除機などヒット商品が定期的に登場し、各局の通販事業を伸ばしてきた。しかし、すでに各局とも自社通販枠として使える放送枠は上限に達し、今後は安易に「売り場」を広げることは難しくなりそう。また、ヒット商品もなかなか登場しない状況が続く。各局は今後、どんな成長戦略を描くのか。各局の今期戦略と「次の一手」を見ていく。
今期の通販売上高の目標として前年比10億円増の118億円を掲げる日本テレビ。ただし、今年4月からの朝帯の番組改編が平日午前の主力の通販コーナーにも影響。番組が若者を意識した内容となったために、通販の主要な顧客である主婦層の視聴が減るなどで、今年4月単月の通販売上高は前年同月比で3割超の減収と苦戦。さらに前年度まで拡大傾向だった深夜枠も今年度はむしろ減っている。
こうした逆風の中で日テレが通販売上目標を達成するべく、実施するのが従来とは異なる商材の取り扱いだ。まず工事付き商品。これは昨年から販売を始めた「キッチンリフォーム」などの単純な物販ではない設置工事を含めた商材のこと。これらは高単価で売上貢献度の高い商材であることに加えて、展開商品のマンネリ化を防ぎ、他局との差別化や視聴者に目新しさを届けるという点でも効果的なようだ。
「キッチンリフォーム」は昨年、深夜枠で販売開始。その後、11月の特番でも販売し、3億円を売り上げるなど好調に推移するなど実績も出てきている。今年は工事付き商品として80万円程度で販売する「バスリフォーム」や100万円を超える「太陽光パネル」などを深夜番組や通販特番で販売する計画だ。
また、深夜枠ではアパレルの取り扱いをスタート。深夜枠でこれまで通りの通常の通販番組に加え、今期からファッションアイテムの企画・販売などを手がける企画会社のスクリーンスタイルと組み、不定期で新番組「コレクションスタイル」を開始した。初回は4月21日に放映。タレントの中野裕太さんを司会に起用し、ゲストとのファッショントークのほか、ショー形式でモデルが商品を着用して見せ、ファッションブランド「スナイデル」などの衣料品、6点を販売した。まだ、売上貢献度は高くはないようだが、この試みで若年層を獲得し通販顧客層をひろげたい考え。(各局の今期の通販戦略は次号から連載)
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