テレビ通販主要30社の09年度の売上高は別表通り。さすがに1000億円近い年商に達したジュピターショップチャンネル(JSC)やQVCジャパンの成長率は鈍化しているが、両社とも不況下の中でも増収増益を達成するなど、市場けん引役である2トップは堅調に推移。また、圧倒的なメディアパワーを背景に日テレなどのキー局系通販も売り上げを伸ばしている。注目すべき事業者の動向と今後の展開について見ていく。
JSC、QVCとも増収増益に 堅調な通販専門放送局2社
まず、1位と2位のジュピターショップチャンネルとQVCジャパン。不況下で既存の販売チャネルが厳しく、新たな販路としてテレビ通販を考える有力メーカーや有名ブランドが多かったようで、高い知名度や訴求力を持ったこうした企業群に「テレビ通販のプラットフォーム」として認識され、取り込めたことが両社の業績拡大の一因となったようだ。
JCSの2010年3月期売上高は1090億円。09年3月期が15カ月変則だったため、単純比較ができないが、08年3~09年4月の12カ月の月次合計売上高との比較では2・5%の増収。利益面でも増益だった。特定の年代にターゲットを絞った新番組や百貨店などと連携した共同番組、知名度や訴求力の高い大手の化粧品やアパレルのメーカーとの新規取引開始などが奏功し、業績を押し上げたようだ。
QVCジャパンの2009年12月期売上高は前年比1・6%増の811億円。衣料品などでのセット販売やジュエリーの売り上げが伸び、客単価下落をカバーしたようだ。利益面も数字は明らかにしていないが、前年比で3・8%の増益だったようだ。
3位のジャパネットたかたも順調さを維持。同社の直近の決算は前期比7・2%増の1491億円。そのうち、テレビ通販事業は3割弱の約400億円で6%の増収だった。テレビをキーにカタログ、チラシ、ネット販売などのチャネルミックス戦略を推し進め、総売上高ではJSC、QVCを大きく上回っている。2010年12月期は総売上高ベースで1600億円を目指すとしており、今期も好調さを維持する見込みだ。
4位のオークローンマーケティングも順調に売上高を伸ばす。当期は通販枠を増やすなど攻めの姿勢で事業を進め、低反発マットレスの「トゥルースリーパー」やダイエット用食品「ヒルズダイエット」などの定番商品を軸に大きく売上高を伸ばし、総売上高は24・3%増の459億円と大幅な増収だった。
このほか、6位のえがおも大幅な伸び。総売上高に占めるテレビ通販売上高が推定値のため、増減率は出していないものの、2010年3月期の総売上高は前年比98・8%増の167億円と大きく伸びた。主力商品の「えがおの黒酢」を軸とした積極的なテレビCMの出稿で新規顧客の獲得が進み、期中に約55万人の新規顧客を獲得したようだ。
キー局通販は概ね好調、日テレは初の100億円超えに
中堅グループはどうか。10位の日本テレビ放送網を筆頭に、11位のディノス、12位のグランマルシェ、13位のテレビ朝日、16位のテレビ東京ダイレクトといったキー局が手がけるテレビ通販も各社とも堅調だった。通販特番や系列各局での通販番組などで「売り場」を拡大できたことが奏功した格好だ。
中でも日テレは前年比26・3%増の105億円と初めて通販事業の年商が100億円の大台を突破。キー局系通販でもディノスをかわし、初めて首位になった。主力の平日午前枠の堅調な拡大に加えて、深夜枠と通販特番の増加による「売り場」の拡大が寄与したようだ。
ただ、ディノスも日テレに首位を譲ったものの、テレビ通販売上高は99億6000万円と前年比で9・4%増と売上高を伸ばしている。テレビ東京ダイレクトも当期から月~金の午前8時台に同社提供の情報番組を持ち、その中で展開している12分半の通販コーナーで大きく売り上げを伸ばしている。
ジパングHDやDD、ヤーマンなどの動きに注目
下位グループでの注目は21位のジパング・ホールディングス、22位のデジタルダイレクト(DD)、23位のヤーマンなど。
ジパングHDは老舗のテレビ通販企業であるプライムと金探鉱会社のジパングとが合併した会社。企業文化が大きくことなる2社が合併した新会社の元で、どのような通販戦略を描くのか注目される。
デジタルダイレクトは期中にあったクレジットカード情報漏えいに関連する個人情報流出問題の影響で、主力のネット販売サイトを約9ヶ月間に渡って閉鎖するなどで業績面では大きな打撃を受けた。ただ、昨年から親会社が三菱商事から流通大手のイオンに変わり、同社の資金や商品、経営戦略が注入された。現状、イオンから派遣された新経営陣の元、巻き返しを図っており、復活が期待できそうだ。
ヤーマンは新商品「ノーノーヘア」などの脱毛機が自社通販のほか、キー局などへの卸によるテレビ通販も順調のよう。同社はヒット商品を作り出せる高い商品開発力を有しており、今後も通販事業の拡大が予想される。
化粧品通販が好調なドクターシーラボ、JIMOSが手がけるインフォマーシャル、プロゴルファーの石川遼選手を起用した英会話DVD「スピードラーニング」のエスプリラインなど今回調査ではランキング圏外もしくは売上高が把握できなかったテレビ通販実施企業も少なくない売上高を計上していると見られる。
メーカーを中心に新規でテレビ通販に参入する例は相変わらず多く、テレビ通販市場はまだまだ拡大傾向にあると言えそうだ。
TV通販の現状と今後は?
気になる某社の再参入、カタログ系通販企業の新たな動きにも注目
不況によって、一般企業のテレビCMなどが入りにくい状況が続く中、逆に活況さを見せるのはテレビ通販市場だ。一頃に比べれば、相対的に通販枠の料金も安価で、その分、費用対効果も取りやすいことから、様々な企業がテレビ通販を実施しようと動きが活発になっているようだ。
相変わらず、知名度の高い大手メーカーはテレビ通販への参入に積極的なようだ。中でも一定の成功を収めていそうなのはネスレのテレビ通販。「ドルチェゲスト」と呼ばれるコーヒーメーカーとそこにセットすることで手軽にコーヒーが飲める専用カプセルをセットにテレビ通販展開をしており、相当な売り上げをあげている模様だ。詳細は不明だが、高い知名度を武器に業績を伸ばしているようだ。
次に気になる動きが「カタログ系通販企業のテレビ通販での衣料品」の販売だ。例えばセシールでは2006年から補正下着「着やせ美人」のテレビ通販展開を開始している(今後はオリジナル化粧品なども展開予定)。
また、イマージュでは今年6月から、衣料品を販売する通販番組を放映した。これまで化粧品子会社のアイムが販売する「ライスフォース」などのテレビ通販を展開していたが、イマージュの商品を販売するテレビ通販展開は初めて。ちなみに初回放映時に販売したのは、ネット販売やカタログでヒット商品となっている「洗える3点セットスーツ」だった。
未確認情報だが、前述の2社以外で大手カタログ通販企業が秋口にも同じく衣料品をメーン商品としたテレビ通販を行うようだ。
衣料品のテレビ通販はリピートにつながりにくく、難しいとされているが各社ともテレビ通販での拡販を目指しているようだ。これはテレビ通販のみで売り上げを獲得して、ペイさせようというよりも、TVCMの延長線としてのブランド認知や、テレビでの告知をフックとしたクロスメディア推進策を狙ったものと見られる。通販枠が下がり、シビアな費用対効果を求められない今だからこその状況かも知れないが、こうした試みが成功するのか。行方を見守る必要がありそうだ。
また、やはり気になるのは今後の新規プレイヤーの動向だ。テレビ局関係者によると、以前、大規模に通販枠を買い占め、大々的にテレビ通販に打って出た後、すぐに撤退した某社が今秋にも、再びテレビ通販を開始するようだ。
販売する商材は以前のものではなく、今度はテレビ通販に合わせて化粧品ではじめるようだ。資金力のある同社がテレビ通販を始めると、以前のように通販枠が高騰する危険性もある。競合となる化粧品通販企業はもちろん、既存のテレビ通販事業者も「売り場」確保という観点から注意が必要かも知れない。
表の見方
今年度のテレビ通販市場調査は2009年6月~2010年5月までに決算期を迎えたテレビ通販実施企業主要上位30社のテレビ通販売上高を掲載した。テレビ通販をメーンとする通販企業であっても極力、テレビ経由の通販売上高を掲載した。表中の「占有率」は総通販売上高(一部、総売上高)に占めるテレビ通販売上高のシェア。表中の「◎=注」は以下の条件がある。
■ジュピターショップチャンネルは催事販売、ネット販売を含む総売上高。前々期は08年1月~09年3月の15カ月変則決算のため前年比での増減率は算出できない■QVCジャパンはネット販売などを含む総売上高■ジャパネットたかたは紙媒体、ラジオ、ネット通販を除いた地上波、衛星波のテレビ通販売上高■オークローンマーケティングはネットや卸を除くテレビ通販売上高の推定値■テレビショッピング研究所は卸販売なども含む総売上高■日本テレビ放送網はネット販売を含む「通販事業部」の売上高
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