ケンコーコムら控訴
懸念される判例たてにした規制拡大
今回の裁判で原告のケンコーコムとウェルネットは、省令でネット販売で扱える医薬品をビタミン剤等の第三類医薬品に制限するのは薬事法の委任範囲を超え、憲法で保障された職業選択の自由を侵害すると主張。さらに省令制定までの検討過程にも違法性があるとし、風邪薬等など2類以上の医薬品ネット販売を継続する権利の確認、省令に盛り込まれる当該規定の無効確認および取り消しを求めていた。
これに対し東京地裁は、省令での医薬品ネット販売の規制は薬事法の委任範囲を超えるものではないと指摘。違憲の主張についても、職業選択の自由そのものを制約するのではなく、ネット販売という営業活動の様態のひとつを規制するものとして合憲と判断、原告側の請求を全て退けた。
いわば、国の主張を全面的に認めた内容で、省令施行に至るまでの過程についても、厚生労働審議会検討部会、ケンコーコムも委員だった「新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会」で意見聴取や真摯な議論が行われ、違法性が認められないとしている。
だが、検討過程に問題がなかったとは言いきれない。04年から「薬事法」改正の検討が行われていたにも関わらず、ネット販売・通販事業者が正式な検討メンバーに入ったのは、省令施行まで半年を切った09年2月に設けられた新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会」から。しかも「円滑施行に関する検討会」では、委員の顔触れが規制推進派の薬業関係者大多数で、ネット販売の安全性に関する踏み込んだ話が行われないまま検討会は打ち切られたのが実情だ。
もともと同検討会は、ネット販売事業者の話も聞いたという実績作りのために設けられたとも言えるもので、議論も規制ありきで進められた。 そうした問題を看過し、真摯な議論が行われたとする判決には、やはり疑問がある。
形式だけでネットは劣ると判断
また、今回の判決で特に問題なのは、医薬品購入者に対する情報提供の部分でネット販売が対面販売よりも劣るという見方を示したことだ。
判決文でネットが対面に劣るとしている理由は、対面販売では購入者の顔色を見ながら薬剤師等の有資格者が的確な対応ができるが、ネットでは購入者の状況が判断できない。購入者からの自己申告が基本のネット販売では、有資格者が能動的に情報を引き出すことができず、その真偽を確認することも難しい。対面では名札で有資格者が対応していることを確認できるが、ネットでは確認できないなどだ。
もっともらしい理由に聞こえるが、実際に対面販売で有資格者がどこまで購入者の状況を見て対応をしているのかは疑問で、虚偽の申告も余程注意を払っていなければを見破ることも難しいはず。また、有資格者か否かの確認についても、名札の取り違えなどで資格のない人が着用しているといったことも考えられる。
今回の判決は、こうした疑問点への踏み込んだ検証がなく、いわば購入者と直接顔を合わせているかどうかという事象だけで、ネットが劣ると判断したものと言わざるを得ないのだ。
まさかの一審判決、規制拡大に危機感
誰が考えてもおかしい判決。ケンコーコムの後藤玄利代表取締役も、「普通に考えれば負けるわけがないと信じて戦ってきた」とする。では、一審は、どのような流れで進んだのだろうか。
原告側は一審で検討過程や規制導入後の矛盾点を突く戦略を採った。しかし、国は原告の主張に対する反論は行わず、全く別の論点を返してくるということが続いたという。結局、最後まで論点が噛み合わないまま、「裁判所も訳がわからず、取り敢えず国の言う通りにしてしまった」(同)のが実情のようだ。
既に原告のケンコーコムとウェルネットは一審判決を不服として東京高裁に控訴。二審の戦略も「国のおかしな理屈を突き崩していくしかない」(同)とする。国の巧みな"肩透かし"に翻弄された一審。二審のポイントは、対面販売の実態や医薬品ネット販売規制の矛盾点にどこまで迫れるかになりそうだ。
一方、ネットの情報提供が対面に劣るという司法判断が下ったことは、今後、他のネット分野等にも影響を及ぼすことにもつながる。この判決が確定した場合、それを楯に行政が省令一本でネットに関連した様々な分野に規制を掛けてくることが考えられるからだ。そうなれば市場の発展も妨げられることになる。
この点については、ネット関連団体の間でも危機感を強めており、一審判決に対する抗議の声明を公表、eビジネス推進連合会では、ケンコーコムの裁判を支援する意向を示している。時代に逆行し、様々な矛盾を抱える医薬品通販の規制は、物販を含むネットビジネス全体に共通した問題という認識が強まっている状況だ。
ケンコーコム・後藤玄利社長が語る
原告が見る一審判決の課題とは
原告側の訴え・請求を全て退ける結果となった一審判決。購入者と直接顔を合わせているか否かという形式的な部分だけでネットの情報提供は対面に劣るという判断が下ったことに、ケンコーコムの後藤玄利代表は「あってはならない判決」と、怒りをあらわにする。既に同社は、ウェルネットとともに控訴をしているが、この判決が確定した場合、行政の規制強化の口実になると予想。医薬品だけではなく通販業界全体に影響する問題と見て危機感を強めている。
原告全面敗訴という一審判決をどう受け止めているのか。
「普通に考えれば負けるわけがないと信じて戦ってきたのだが、ここまでの判決が出るとは思わなかった。しかも判決理由がひどい」
一審を振り返ってみて何か課題は。
「我々としては、きちんと言うべきことは言ったのだが、我々と国の論点が噛み合わないまま話が進んでしまった。実際、ネット販売規制と矛盾する配置薬の問題などを指摘しても、それに対する反論はなく、我々が提示した論点とは異なる、自分の論点を返してくるという状況だった。結局、行司役の裁判所もよく分からないため、取り敢えず国の言っている通りにしたのだろう。裁判所の思考が停止してしまったとしか思えない」
情報通信技術の状況が変われば医薬品ネット販売を認める可能性があるという付言も加えられたが。
「形式上、直接購入者と対面しなければ安全性が確保できないという司法判断が下され、テレビ電話も認められていない。その中で、対面と同等以上の仕組みがどのようなものになるのか想像がつかない」
今回の判決で、裁判所がネット販売の情報提供は対面販売に劣るという見方を示したことについて、どのように捉えているのか。
「ネットからの情報提供が対面よりも有意に劣るという判決を裁判所が出すこと自体、あってはならないことだと思っている。ネットの方が情報提供で劣るというのは、完全な思い込みだ。判決文では、対面であれば顔色を見ることができて安全、あるいはネット販売は、購入者の自己申告の真偽が分からないなどと言っているが、『新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会』(検討会)で規制推進派の委員が発言していたことを鵜呑みにしたような話。詭弁としか言いようがない」
「検討会では、こちらが何かを言うと規制推進派の委員が全くおかしなことを順繰りに言い出した。それに対しこちらが全て反証するだけの時間がなかった。結局、反証しきれなかった部分がそのまま残り、それが判決にも影響したと思う」
今回の判決が確定した場合、今後ネット販売にどのような影響をおよぼすと見ているのか。
「検討会での委員の発言というレベルであればそれほど影響が大きいわけではないが、判決として出てしまうと、インターネットの情報自体が低いということを司法が認めたことになる。このままネットが対面に劣るという判決が確定すれば、官僚が作った省令で何でも規制することがまかり通ってしまう。これは通販業界全体の問題だ」
eビジネス推進連合会でも裁判を支援していく意向を表明しているが、どのように連携していくのか。
「具体的な話は特に出ていないが、司法の場とは分けて考えることになる。eビジネス推進連合会には声明を出してもらっているが、そうした活動を通じ世論を作っていくという方向で取り組みを進めるのではないか」
4月13日に控訴したが、二審ではどのような戦略をとっていく考えなのか。
「一審判決は、国のおかしな理屈を裁判所が認める形になってしまった。対面販売の実態というものも含めて、おかしな理屈を逐一突き崩していくしかない。我々も裁判で闘えるところまで戦っていくつもりだ」
懸念される判例たてにした規制拡大
今回の裁判で原告のケンコーコムとウェルネットは、省令でネット販売で扱える医薬品をビタミン剤等の第三類医薬品に制限するのは薬事法の委任範囲を超え、憲法で保障された職業選択の自由を侵害すると主張。さらに省令制定までの検討過程にも違法性があるとし、風邪薬等など2類以上の医薬品ネット販売を継続する権利の確認、省令に盛り込まれる当該規定の無効確認および取り消しを求めていた。
これに対し東京地裁は、省令での医薬品ネット販売の規制は薬事法の委任範囲を超えるものではないと指摘。違憲の主張についても、職業選択の自由そのものを制約するのではなく、ネット販売という営業活動の様態のひとつを規制するものとして合憲と判断、原告側の請求を全て退けた。
いわば、国の主張を全面的に認めた内容で、省令施行に至るまでの過程についても、厚生労働審議会検討部会、ケンコーコムも委員だった「新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会」で意見聴取や真摯な議論が行われ、違法性が認められないとしている。
だが、検討過程に問題がなかったとは言いきれない。04年から「薬事法」改正の検討が行われていたにも関わらず、ネット販売・通販事業者が正式な検討メンバーに入ったのは、省令施行まで半年を切った09年2月に設けられた新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会」から。しかも「円滑施行に関する検討会」では、委員の顔触れが規制推進派の薬業関係者大多数で、ネット販売の安全性に関する踏み込んだ話が行われないまま検討会は打ち切られたのが実情だ。
もともと同検討会は、ネット販売事業者の話も聞いたという実績作りのために設けられたとも言えるもので、議論も規制ありきで進められた。 そうした問題を看過し、真摯な議論が行われたとする判決には、やはり疑問がある。
形式だけでネットは劣ると判断
また、今回の判決で特に問題なのは、医薬品購入者に対する情報提供の部分でネット販売が対面販売よりも劣るという見方を示したことだ。
判決文でネットが対面に劣るとしている理由は、対面販売では購入者の顔色を見ながら薬剤師等の有資格者が的確な対応ができるが、ネットでは購入者の状況が判断できない。購入者からの自己申告が基本のネット販売では、有資格者が能動的に情報を引き出すことができず、その真偽を確認することも難しい。対面では名札で有資格者が対応していることを確認できるが、ネットでは確認できないなどだ。
もっともらしい理由に聞こえるが、実際に対面販売で有資格者がどこまで購入者の状況を見て対応をしているのかは疑問で、虚偽の申告も余程注意を払っていなければを見破ることも難しいはず。また、有資格者か否かの確認についても、名札の取り違えなどで資格のない人が着用しているといったことも考えられる。
今回の判決は、こうした疑問点への踏み込んだ検証がなく、いわば購入者と直接顔を合わせているかどうかという事象だけで、ネットが劣ると判断したものと言わざるを得ないのだ。
まさかの一審判決、規制拡大に危機感
誰が考えてもおかしい判決。ケンコーコムの後藤玄利代表取締役も、「普通に考えれば負けるわけがないと信じて戦ってきた」とする。では、一審は、どのような流れで進んだのだろうか。
原告側は一審で検討過程や規制導入後の矛盾点を突く戦略を採った。しかし、国は原告の主張に対する反論は行わず、全く別の論点を返してくるということが続いたという。結局、最後まで論点が噛み合わないまま、「裁判所も訳がわからず、取り敢えず国の言う通りにしてしまった」(同)のが実情のようだ。
既に原告のケンコーコムとウェルネットは一審判決を不服として東京高裁に控訴。二審の戦略も「国のおかしな理屈を突き崩していくしかない」(同)とする。国の巧みな"肩透かし"に翻弄された一審。二審のポイントは、対面販売の実態や医薬品ネット販売規制の矛盾点にどこまで迫れるかになりそうだ。
一方、ネットの情報提供が対面に劣るという司法判断が下ったことは、今後、他のネット分野等にも影響を及ぼすことにもつながる。この判決が確定した場合、それを楯に行政が省令一本でネットに関連した様々な分野に規制を掛けてくることが考えられるからだ。そうなれば市場の発展も妨げられることになる。
この点については、ネット関連団体の間でも危機感を強めており、一審判決に対する抗議の声明を公表、eビジネス推進連合会では、ケンコーコムの裁判を支援する意向を示している。時代に逆行し、様々な矛盾を抱える医薬品通販の規制は、物販を含むネットビジネス全体に共通した問題という認識が強まっている状況だ。
ケンコーコム・後藤玄利社長が語る
原告が見る一審判決の課題とは
原告側の訴え・請求を全て退ける結果となった一審判決。購入者と直接顔を合わせているか否かという形式的な部分だけでネットの情報提供は対面に劣るという判断が下ったことに、ケンコーコムの後藤玄利代表は「あってはならない判決」と、怒りをあらわにする。既に同社は、ウェルネットとともに控訴をしているが、この判決が確定した場合、行政の規制強化の口実になると予想。医薬品だけではなく通販業界全体に影響する問題と見て危機感を強めている。
原告全面敗訴という一審判決をどう受け止めているのか。
「普通に考えれば負けるわけがないと信じて戦ってきたのだが、ここまでの判決が出るとは思わなかった。しかも判決理由がひどい」
一審を振り返ってみて何か課題は。
「我々としては、きちんと言うべきことは言ったのだが、我々と国の論点が噛み合わないまま話が進んでしまった。実際、ネット販売規制と矛盾する配置薬の問題などを指摘しても、それに対する反論はなく、我々が提示した論点とは異なる、自分の論点を返してくるという状況だった。結局、行司役の裁判所もよく分からないため、取り敢えず国の言っている通りにしたのだろう。裁判所の思考が停止してしまったとしか思えない」
情報通信技術の状況が変われば医薬品ネット販売を認める可能性があるという付言も加えられたが。
「形式上、直接購入者と対面しなければ安全性が確保できないという司法判断が下され、テレビ電話も認められていない。その中で、対面と同等以上の仕組みがどのようなものになるのか想像がつかない」
今回の判決で、裁判所がネット販売の情報提供は対面販売に劣るという見方を示したことについて、どのように捉えているのか。
「ネットからの情報提供が対面よりも有意に劣るという判決を裁判所が出すこと自体、あってはならないことだと思っている。ネットの方が情報提供で劣るというのは、完全な思い込みだ。判決文では、対面であれば顔色を見ることができて安全、あるいはネット販売は、購入者の自己申告の真偽が分からないなどと言っているが、『新医薬品販売制度の円滑施行に関する検討会』(検討会)で規制推進派の委員が発言していたことを鵜呑みにしたような話。詭弁としか言いようがない」
「検討会では、こちらが何かを言うと規制推進派の委員が全くおかしなことを順繰りに言い出した。それに対しこちらが全て反証するだけの時間がなかった。結局、反証しきれなかった部分がそのまま残り、それが判決にも影響したと思う」
今回の判決が確定した場合、今後ネット販売にどのような影響をおよぼすと見ているのか。
「検討会での委員の発言というレベルであればそれほど影響が大きいわけではないが、判決として出てしまうと、インターネットの情報自体が低いということを司法が認めたことになる。このままネットが対面に劣るという判決が確定すれば、官僚が作った省令で何でも規制することがまかり通ってしまう。これは通販業界全体の問題だ」
eビジネス推進連合会でも裁判を支援していく意向を表明しているが、どのように連携していくのか。
「具体的な話は特に出ていないが、司法の場とは分けて考えることになる。eビジネス推進連合会には声明を出してもらっているが、そうした活動を通じ世論を作っていくという方向で取り組みを進めるのではないか」
4月13日に控訴したが、二審ではどのような戦略をとっていく考えなのか。
「一審判決は、国のおかしな理屈を裁判所が認める形になってしまった。対面販売の実態というものも含めて、おかしな理屈を逐一突き崩していくしかない。我々も裁判で闘えるところまで戦っていくつもりだ」
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- "ネットは対面に劣る"は本当か? from 通販新聞

