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日生協 第10次中期計画、個配供給高1兆円など計画未達に

001p2.jpg 日本生活協同組合連合会(日生協=本部・東京都渋谷区、山下俊史会長)が進める第10次中期計画(2007―09年度)の取り組みが停滞している。1月14、15日の2日間にわたり都内で開催した「2010年全国政策討論会」で明らかとなったもので、主力の店舗や宅配のほか、通販など各事業で計画が未達となる見込み。リーマンショックを背景にした消費低迷に加え、冷凍餃子食中毒事故発生に伴い組合員の信頼回復を優先せざるを得なかったことが影響した形だ。これは消費者の信頼を裏切った場合のツケの大きさを改めて印象付けるものだが、日生協としても、GMS等によるネットスーパーの拡大やネット販売の普及など市場の変化が加速する中、餃子事故の後遺症とも言える"施策の空白"が後々痛手になることも考えられる。






 


10次中期計画進捗状況は停滞

 07年度からの第10次中期計画は、08年の「生協法」改正などもあり、日生協でも大きな節目と位置付けていたと言える。
  
 基幹である購買事業の計画でも、店舗事業で地域ごとの出店計画を策定・具現化し損益の安定化を図るほか、宅配事業で個々の組合員宅に商品を届ける個配の供給高1兆円達成と宅配事業全体で利用世帯加入率20%とすることなどを目標に設定。店舗事業の再生とともに、好調な推移を辿っていた個配をドライバーに組合員および事業の拡大を目論んでいた。 だが、実際の計画の進捗状況は全般的に停滞する結果となっている。

成長ドライバーの個配伸び鈍化

  実際の計画の進捗状況でも購買事業についてみると、店舗事業では、09年度供給高が9652億円(店舗数1036店)、前中計の最終事業年度に当たる06年度比で3・1%の減少となる見込み。課題である収益性の改善についても、出店戦略の策定、店舗オペレーションの効率化などに取り組んだが、赤字体質から脱する道筋が見えていないのが実情で、今中計での成果はほとんどないという状況だ。

  一方、宅配事業の供給高は、06年度比2・8%増の1兆5777億円とプラスになるもようだが、順調に推移しているとは言い難い。  特に今中計では、個々の組合員に商品を届ける個配を成長のドライバーと位置づけた施策を展開してきたが、GMSや食品スーパーがネットスーパーを強化したことや消費低迷などの影響で一時の勢いが失速。09年度の供給高は9290億円と06年度比で20%超の増加となるものの、当初目標の供給高1兆円、利用世帯加入率20%は、ともに未達となる見込みだ。
 
 日生協としては、個配をけん引役に新規組合員を獲得組織や事業の拡大を図る戦略をとってきたわけだが、供給高の伸長率は07年度の9・8%増に対し08年度が4・6%増、09年度が4・8%増(見込み)と鈍化傾向にあり、今後の事業展開に不安材料を残す形となっている。

カタログ健闘も通販全体で苦戦

  一方、通販事業についても振るわず、09年度の供給高は前年比2%減のペースで推移しているという。同事業では、衣料品や家具・雑貨等の「くらしと生協」に代表されるカタログ事業、雑貨等をチラシで扱うキャロット事業、そして08年から始めたギフト事業などを展開しており、第10次中期計画では、媒体の改善や商品の企画・開発力アップなどを狙いにカタログ事業でデータベースマーケティング確立、媒体の選択配布導入などに取り組むほか、基幹システムの改修などを行った。

  ただ、媒体・事業別の状況はまだら模様で、カタログ事業は「MDの取り組みなどが奏功しプラスで推移している」(矢野和博専務理事)など健闘している一方で、キャロット事業とギフト事業が低迷。特に、ギフト事業については、09年度の当初計画である供給高53億円に対し、着地点は27億円となる見込みで、立ち上がりから計画の見直しを迫られている。

 ネット強化策でもトラブル発生

  現状、日生協の中で通販事業の位置付けは、個配などと比べると低い状況だが、市場環境の変化を考えれば、新たな事業の柱となり得る可能性はある。その中でポイントとなるのは、やはりいかにネットに対応していくかということだ。

  これにはネット販売の利用拡大という市場環境の流れもあるが、属性が似ていると見られる組合員同士のコミュニケーションツールとしての機能、子育て世帯を中心とした若年層の新規組合員獲得も期待できるといった利点も考えられる。また、GMSなどがネットスーパーで攻勢をかけている状況を考えれば、個配でもネット対応の強化は不可欠な要素だ。

  無論、日生協でもネット対応の強化を念頭に置いており、第10次中計でもこの一環として、「コープ・ウェブ・スタンダード」(CWS)と呼ばれるネット共通基盤を開発。各地域生協等への導入を進め、通販や個配などと連携を図っていくことを構想していた。だが、導入初期にシステム障害が発生し、全国展開が遅延。当初の目標とは裏腹に、ネット対応の取り組みがなかなか進まなかったというのが実情だ。

  日生協では既に「くらしと生協」の通販サイトを設けるなど、ネットの取り組みは行っているが、使い勝手の面で課題が少なくない。一つは、決済などの関係からネット会員の登録が必要で、登録が完了するまでに一定の期間を要すること、また、決済手段についても、基本的に銀行引き落としだけにしか対応していないという課題がある。こうした基本的な使い勝手の改善も不可欠と言える。

 餃子事故の影響で施策の凍結も

 日生協にとって、節目となるはずだった第十次期計画だが、購買事業や関連事業の状況を見ると、あらゆる施策が思惑通りに進まないという結果となった。

 無論、この背景にはリーマンショックに端を発した消費の低迷、GMSなど他業態との競争激化もある。だが、とりわけ大きな足かせとなったのが冷凍餃子の食中毒事故だ。実際、組合員の信頼回復などの事後対応に追われた結果、当初計画が狂う事態が発生。今中計で行うはずだったクレジット事業の研究および具体化の検討計画は、餃子事故の煽りで凍結となっている。ネット販売、あるいは個配などの利便性を高めるといった面からも、決済関連の取り組みは重要と言えるが、完全に乗り遅れた形だ。
 
 また、基盤となる組合員組織の拡大の面でも、餃子事件は少なからず影響があったようだ。現状、組合員数自体は、前中計の時点よりも増えているが、当初は餃子事故の影響から新規組合員の開拓が思うように進まなかったのが実情。この出遅れが後々まで影響し、個配や通販などを含む購買事業全体の低迷の度合いを大きくさせた面があることは否めない。

 食の安全を売り物してきた生協の商品で発生した食中毒事故は、コープブランドへの信頼を損ねるだけではなく、日生協の組織的な問題も浮き彫りにし、今中計の中で尾を引く形となった。これは、一度消費者の信頼を損ねた場合のツケの大きさを改めて実感させるものと言えるだろう。

 11次中計 は"信頼再形成"重点

 こうした状況を踏まえ日生協は、11年度からの第11次中期計画で(1)生協への信頼再形成(2)経済・くらし・事業経営の危機への対処(3)危機を克服して未来への展望を開く、をテーマに取り組みを進める意向だ。このうち最優先課題となるのは(1)。"信頼回復"ではなく、"信頼再形成"としたのは、100%安全と言い切れる商品はないという餃子事件の教訓を踏まえたもの。事件以前と同様の組合員との信頼関係を回復するのは困難との考えから、改めて組合員との関係性を構築するというものだ。

 一方、個々の事業についてみると、店舗事業で不採算店のスクラップ、店舗オペレーションの改善・効率化など赤字対策を中心に展開するほか、宅配事業では、個配の成長を維持するため、組合員数の拡大などを推進。引き続き個配をベースに事業の拡大を図る意向で、利用世帯加入率の低い地域生協については、集中的に組合員の獲得を行うことも視野に入れる。
 
 通販事業については、カタログ、キャロット、ギフトの各事業を強化する計画で、品揃えの拡充やサービスレベル向上などの取り組みを推進。カタログ事業では、世代別のマーケティングや媒体の選択配布を通じ、供給高の拡大を図るほか、顧客管理システムを活用したリピート利用の促進などに取り組む。
 
 また、キャロット事業では、チラシ紙面の改善を図り購入点数のアップを図るほか、価格競争力の強化を推進。ギフト事業では、コスト削減等による採算性の改善のほか、中元・歳暮に加え歳時や食品、通年ギフト等の商材の強化を図る。
 
 さらにネット対応の部分では、CWSをベースに、通販や旅行といった各事業と、組合員のコミュニティサイトを連携させ、"総合コーディネイト機能"を強化していくとしている。
 
 餃子事故の影響が尾を引き第10次中期計画の取り組みが停滞した日生協。第11次中期計画では、この遅れを取り戻すべく、"信頼の再形成"重点テーマに各種施策を進めるが、強固な組合員組織に支えられているとは言え、一度大きく揺らいだ信頼関係を新たな形で構築していくことは並大抵のことではない。他業態との競争激化、さらに消費の低迷という厳しい経営環境が続く状況を考えても、次の中期計画は、日生協の将来を占う上でも、重要なものになりそうだ。

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