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アスクル 個人向け通販に本腰、専門子会社を新設

011.jpg 巨大通販企業、アスクルが「個人向け通販」に本腰を入れ始めた。11月上旬に専門子会社「アスマル」を新設。ネット販売で業績を伸ばすネットプライスドットコムが資本参加し、共にアスクルの個人向け通販事業の拡大を進める。アスクルは文具を中心とした法人向け通販企業としては業界首位。年商は今や2,000億円を誇る。本業で培った知名度や商品調達力で法人向け通販と同様、個人向け通販事業でも首位を目指す。その行方によっては競合の通販企業にとって強力なライバルとなりそうだ。
「時間を買った」、ネットプライスと提携


 「時間を買ったと思ってもらえれば」。本紙の「(自力で個人向け通販を展開することは)諦めたのか」との質問について、アスクルの幹部はこう答えた。

 アスクルは11月10日付で個人向けネット販売子会社「アスマル株式会社」を新設。現在、本体で展開中の個人向けネット販売サイト「ぽちっとアスクル」の事業を新会社に移管。詳細は明らかにしていないが、本業の文具・事務用品、生活雑貨などを軸に一般消費者向けのネット販売事業を展開する計画だ。なお、アスマルの社長にはアスクルの酒川美代子執行役員が就任する。

 来年2月下旬には共同購入「ギャザリング」によるネット販売で業績を伸ばすネットプライスがアスマルに資本参加。株式の20%を保有して、集客や人材など個人向け通販拡大のためのノウハウなどを支援する予定。

 法人向けオフィス用品通販企業の「勝ち組」として知られ、日本国内の企業・事業所の半数以上を顧客に持つアスクル。消費者の大半が何らかの「仕事」をしている以上、企業・組織に属しているわけで、アスクルの知名度は抜群と言える。

 また、商品調達力に関しても、折り紙つき。一口に「オフィス用品」と言っても、無論、文具・事務用品ばかりではない。「オフィス」とは膨大な人間が集まる生活の場でもある。そのため、飲料や食品、家具・インテリア、生活雑貨などなど人間の生活に必要な様々な商品にもニーズがあり、アスクルでは年々、取り扱うジャンルや商品数を拡大させてきた。それらの商品群を仕入れることができる膨大なサプライヤーをすでに抱えており、個人向け通販を開始する点において、何らネックはなさそうだ。
 知名度もあり、商品力もある。資金力も豊富。法人向け通販と同様、個人向け通販においても「死角」はないように映る。ただし、これまでのアスクルの個人向け通販事業は必ずしも成功とは言いがたいものだった。

 あまり知られていないが実はアスクルは個人向け通販事業をすでに98年から開始。「ポータルアスクル」という名称で通販サイトを運営し、法人向けの商品の中から個人にも販売可能な商品を販売。自力で法人向け通販以外の業績の柱に育てていく計画だった。

 ただ、本業が急成長を遂げていた当時、片手間で実施してきた個人向け通販はさほど拡大せず、恐らく売上規模は数億円レベルで長らく沈黙を守ってきた。それが一昨年、動きを見せた。巨大なマーケットになりつつある個人向け通販市場。今、手を言っておかねば、今後の参入は難しいとの判断があったからだろう。そこで07年12月にこれまでの「ポータルアスクル」を閉鎖し、新たに「ぽちっとアスクル」を新設。同じく事務用品のほか雑貨、食品など日用品全般、約3万点を取りそろえ、個人向け通販に本格的に打って出た。

 新サイトの設置にあわせて、顧客開拓も強化。ネット広告のほか、ラジオや雑誌などへ広告を出稿。新規顧客の取り込みを強化したほか、本業の法人向け通販カタログにも告知。所属企業でアスクルを利用する社員個人の利用などを促した。翌年の08年7月にはモバイル通販サイトも開設、NTTドコモの公式サイトとして、販路の拡大を図った。当時の担当者は「日用品のアマゾンを目指す」としており、力を入れようが伺える。

 ただし、それでもアスクルが目指した「個人向け通販」の壁は厚かったようだ。一定の資金や人材を割き、「本気で臨んだ」にも関わらず、思うような成果をあげることができなかった。

 それを裏付けるのが「ぽちっとアスクル」の売上高だ。別表はアスクルが決算時に発表した同事業の四半期ごとの売上高を表すもの。これを見ても分かるとおり、実数は明らかにされていない。これまで同事業の業績に関してはひた隠しに隠してきたが、今回の「アスマル」の設立でその売上高が判明した。直近決算(09年5月)でその年商は18億6,100万円。総売上高の1%にも満たない数字だ。同社としては満足できる数字ではなかろう。

 恐らくは「法人」と「個人」では求められる商材や訴求ポイントを含めた通販戦略が大きく異なるはずで、アスクルにはこうしたノウハウが欠如していたからであろう。

 今回のネット販売専門子会社「アスマル」の新設と、それに伴うネットプライスの資本参加は個人向け通販の成功に不可欠なノウハウを埋める動きと言える。単独で個人向け通販を育てるにはいかにアスクルとはいえ、難しい。「時間を買った」という冒頭のアスクル幹部は「単独でも時間をかければ、成功できるはず。ただ、市場は待ってくれない。だから、時間を買う意味で今回の動きとなった」と説明する。

 現状、アスクルの個人向け通販事業は四半期ベースで3割近い成長を維持しているようだ。今後は「確実に(30%増超える)高い成長を持続できるはず」(同社)とする。

 新会社「アスマル」の社名の由来は「明日」の「マルシェ(=市場)」をもじったもの。アスクルの個人向け通販は個人の需要を適確に捉え、「明日の市場」となりえるのか。

 本来持つ高いポテンシャルにネットプライスの個人向け通販ノウハウが組み合わさるアスクルの個人向け通販。商材が多岐に渡るだけに行方如何では多くの通販企業にとって脅威となりそうだ。

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