2006年から通販事業に参入した主要なメーカーは、大正製薬やハウス食品、富士フイルム、久光製薬、理研ビタミン、ゼリア新薬工業など。これと前後して、フレンテインターナショナルやサッポロ飲料もそれぞれ健康食品通販を始めている。いずれも有力メーカーとして知られるが、参入から3年を経過した現在の状況はどうのだろうか。
大正製薬、顧客数28万人に
大正製薬は、本格的に健康食品および基礎化粧品で通販を開始した。メーカー通販では、研究・開発力を活かし独自素材の商品を展開するのが一つのパターンだが、同社の場合、既存の一般的な素材を使用した商品をメーン展開。素材の品質や製法などで差別化を図るというのが基本戦略で、健食や化粧品の研究・開発等で定評のある東洋新薬と合弁で設立した「大正ヘルスケア」を通じた通販商材の企画開発体制を整備している。
スタート当初は、40代以上の女性層をターゲットに、「ナリッシュ」のブランドで基礎化粧品と美容系サプリメントを投入。この層は、商品の良さを実感すれば、継続利用する傾向があり、主婦層さも含まれるためファミリーユースに切り込む足掛かりにもなる。同社の商品展開を見ても、青汁やダイエット関連商品など、幅広いニーズが見込める商品へとラインアップを拡充してきた形だ。
一方で、医薬品メーカーの特徴を活かした商品として、「グルコサミン」が好調に推移。膝など関節系の悩みで健食の使用に関する相談を受けていた医師からの提案を受けて開発した商品で、質の高い「グルコサミン」のみを使用したことが奏効し、70代以上を中心にした新規獲得のけん引役になっているという。
同社では、通販事業の売上高を公表していないが、前期(09年3月期)末時点の累計顧客数は約28万人にまで拡大。医薬品メーカーの信用を背景にした手堅い施策で事業規模を拡大させているもようで、今後は、基幹商品の「青汁」や「グルコサミン」を中心に拡販を進めていく考えだ。
ハウス食品、今期10億円超えへ
また、ハウス食品では「天然効果活性ウコン」で健食通販に参入。少子高齢化を背景にした家族構成の変化などで見込まれるレトルト食品等の市場縮小への対応策となるもので、09年3月期の売上高は6億7,800万円となった。
同社の健食通販は、香辛料メーカーのイメージを打ち出し、ウコンやショウガ、シソを使った商品を展開しているのが特徴で、新聞広告やテレビのワイドショー番組内での生コマーシャルなどを通じ新規顧客の開拓を推進。今期は、6月に投入した「活性黒にんにく」の拡販をバネに通販事業売上高を12億7,000万円にまで引き上げる計画だ。
一方、この10月からは、新たな通販事業の展開として、米国のニュートリシステム社と組み、通常食タイプのダイエット補助食品通販を開始。自社で保有する大豆成分の独自加工技術と食品メーカーとしてのノウハウを活かした商品展開を行い、受注や顧客サポートの部分をニュートリシステム社の仕組みを活用する手法で、新たな事業の柱への育成を狙う。
富士フイルム、本業の技術訴求
富士フイルムは、ヘルスケア分野参入の一環として基礎化粧品および健食通販を開始。本業の写真やフイルムの技術を基礎化粧品に応用するなど、独自性を持たせた商品や積極的な広告展開が奏効し、09年3三月期の通販売上高は24億円前後となったようだ。
同社が扱っているのは、基礎化粧品の「アスタリフト」シリーズ、「アスタキサンチン」を使用した「オキシバリア」や太り気味の人向けの「メタバリア」といった健食で、通販および店販で展開。
通販広告は、新聞や折込チラシのほか、BS・CSのインフォマーシャルなどを展開する。一方で他のメーカー通販担当者の間で話題となったのが歌手の中島みゆきさんと松田聖子さんを起用した基礎化粧品シリーズ「アスタリフト」のテレビCM。この展開により商品の認知度向上と新規顧客の獲得を進めた形で、さらに愛用者向けイベントの開催、コミュニティーサイトや会報誌の活用などを通じた顧客の囲い込みにも力を入れる考えのようだ。
フレンテ、見直し策が奏功
また、独自素材「乳酸菌LS1」を使用したオーラルケアのタブレット商品「クリッシュ」で通販を始めた菓子メーカーのフレンテインターナショナルの場合、通販事業の売り上げは、まだ1億円に届かないものの、商品の展開手法の変更で今後につながる手掛かりを掴んだようだ。
商品に使用する「乳酸菌LS1」は、口内環境を整える効果があるとされるもので、アルミパックタイプの「クリッシュ」と「乳酸菌LS1」を高配合した高単価商材の「スーパークリッシュ」を展開してきた。
同社が商品の展開手法を変更したのは昨年で、継続率向上を目的に定期コースを設置したほか、「顧客が最も重視しているのは効果の体感」(同社)と考え、アルミパック商品の新規顧客向け販売を中止し、「乳酸菌LS1」高配合の「スーパークリッシュ」に特化した。
また、ターゲットも小さな子供がいる30―40代から、50―60代の中高年層へシフトさせ、中高年層を意識したクリエイティブの新聞広告を投入。一連の施策が奏効し、「レスポンスが改善された」(同)という。今後は、既存顧客の活性化なども進め、売上高を1億円の大台に乗せる構えだ。
健食・化粧品通販市場の競争激化、昨今の景況悪化などもあり、通販事業売り上げが計画を下回っているというメーカーも少なくない。ただ、独自の素材や技術、企業イメージなど明確な軸足を持つ企業は比較的堅調なようで、今後につながる手応えも掴みつつあるようだ。
予期せぬ事態発生で撤退も
一方では、撤退を余儀なくされたケースも幾つか出てきている。
2006年11月から美容系サプリメントで通販を始めた第一三共ヘルスケアでは、女性層向けの美容系サプリメント「ナチュラルビトン」シリーズを展開していたが、「大豆イソフラボン」使用した一部商品について、原材料の「大豆」に日本で禁止されているガンマ線を照射されていた可能性が浮上した。このため、07年6月に商品の自主回収を実施。その後、08年2月には通販サイトを閉鎖し、健食通販事業から撤退した。
当初の計画では、初年度で売上高を2億円とし、ノウハウの蓄積を進めた上で、商品の拡充などを検討する考えだったが、「通販事業の立ち上げから約半年で問題が発生し、何も検証できないまま、事業を終了した」(経営企画部)。同社でも、新たな成長分野として機能性食品などを有望視しているが、現状、健食通販再開の予定はないという。
このほかに07年2月からフローズンタイプの野菜飲料で健食通販の本格展開に乗り出したサッポロ飲料(後に食品部門会社のサッポロフーズネットに通販事業を移管)も、グループの事業再編を理由に今年3月で通販事業から撤退。各社とも、数年スパンで通販事業を育成する意向だったが、当初予想していなかった突発的な問題や状況の変化で、通販事業からの撤退を余儀なくされた形だ。
今後も、食品・医薬品メーカーが健食・化粧品通販に参入するケースは出てくるものと見られる。だが、競合の激化など市場環境は厳しく、参入から3年を経過した各社の状況からも、通販を新たな事業の柱に育成するには、予想以上に時間が掛かることになりそうだ。
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